お勧めの一冊 目次 ホームにもどる   1/4更新

通訳関係    
米原万理 不実な美女か 貞淑な醜女か 新潮文庫
渡辺 修・
長尾ひろみ
外国人と刑事手続きー適正な通訳のためにー 成文堂
石田ほか3人 外国人問題弁護ノート                      アルク
梓澤和幸  在日外国人----弁護の立場から 筑摩書房
BS放送通訳グループ 放送通訳の世界----衛星放送のニュース番組を支える立役者 アルク
翻訳関係    
村上春樹 翻訳夜話 NEW  1/4  文春新書
柳瀬尚紀 翻訳はいかにすべきか 岩波新書
柳瀬尚紀 広辞苑を読む 文春新書
柳瀬尚紀 翻訳は実践である 10/9  
宮脇孝雄 翻訳者の書斎 研究社出版

「不実な美女か 貞淑な醜女か」 米原万理   (新潮文庫)

通訳者を目指す者はまずこれを読まねばならないと思います。通訳入門といった種類の本のなかでは出色の出来です。とにかく面白いです。僕はこれを読んで通訳者になりたいと思いました。今でも時々読み返えします。読むたびに発見があり、楽しませてくれる本です。通訳の裏の世界がわかって大変いい勉強になります。

 

「外国人と刑事手続きー適正な通訳のためにー」  渡辺 修・長尾ひろみ   (成文堂)

司法通訳を学ぶ人の基本テキストになる本です。長尾さんは日本司法通訳人協会の会長です。この本読まずして、司法通訳は語れません。理論的なことばかりではなく、実例が豊富で読みやすいです。この本をきっかけに、司法通訳の重要性が社会に認識されることを期待したいです。

 

「外国人問題弁護ノート」  石田武臣ほか3人       (アルク新書)          目次へ

通訳者を目指すなら、どうしてもかかわってくるのが司法通訳。国際化の時代、今後ますます司法通訳の需要は増えます。これは断言できます。特に韓国語に関しては。日本はアメリカ等に比べ、司法通訳に対する認識が低いですが、今後改善されていくこともまた、自明の理です。この本は外国人問題を、実例を元にしてわかりやすく紹介してくれます。類書がないだけに、僕たちにとっては貴重な本になります。日本にいる外国人がどんな問題にまきこまれるのか、入管法なるものは何なのか、通訳人の役割は、また弁護人はどんな気持ちで外国人問題とかかわってきたのか……など。司法通訳にこれからかかわっていこうとする人にとっては入門書の役割を果たす本です。

 

「在日外国人---弁護の立場から」   梓澤和幸   (筑摩書房)

弁護士の書いた本です。上の本より専門的で、総括的です。
第1章 外国人労働者問題
第2章 出入国管理法と難民問題
第3章 ヨーロッパ、アメリカなどの外国人問題
第4章 歴史が作った排外的体質---在日朝鮮人問題と外国人労働者
第5章 改革のために
以上のような構成です。こうして章立てを見るだけでも、この本が、単なる事例集ではなく、事例に基づきつつ、大きな視野も忘れていないことがうかがえます。特に興味深いのが、ヨーロッパ、アメリカなどの先進国の外国人問題を紹介しているところです。先進国はどこの国も、流入してくる外国人労働者問題と格闘している様子がわかります。グローバルな視点で外国人問題を捉えている筆者の姿勢に好感を持ちました。
直接通訳とは関係ないかもしれませんが、司法通訳にかかわる人間として、知っておきたい情報が、分かりやすく、かつ本格的に論じられているので、皆さんにも是非、お勧めします。   

 

「放送通訳の世界」-----衛星放送のニュースを支える立役者  BS放送通訳グループ

通訳は難しいです。マイクを持つと、頭がパッと真っ白になって、スピーカーの言うことが耳に入ってきません。また聞き取れても日本語(あるいは韓国語)が口からすらすらと出てきません。通訳でなくても、マイクを持つと緊張するものです。いえ、マイクを持たずとも、人前に出るだけで、緊張します。僕も教師になりたてのころは教室に行くのが怖かった(ほんとの話)。そういう人間からは放送通訳なんて、雲の上の話ですが、この本は雲の上の裏話を面白おかしく紹介してくれていて、とっても楽しいです。なんと言っても通訳最前線の話ですから、通訳者としての普段の心がけや、勉強の方法など参考になります。そして、通訳が好きで好きでたまらないといったこの人たちの姿勢に感銘を受けます。僕もこのぐらいやらなくっちゃね。とにかく、この本、元気が出ますよ。

 

「翻訳夜話」 村上春樹 柴田元幸 (文春新書)

この本のあちこちに赤ペンでチェックを入れました。例えば、

  柴田「翻訳家なり訳文に何を求められるかをお聞かせ願えますか?」
  村上「ひとくちで言えば愛情ですね。偏見のある愛情です」 

  「翻訳はもう年がら年中しこしことやっています。時間があいたら翻訳をする、という感じで。翻訳ってまとめ  てわあっと一挙にはやれないですよね。ちょっとずつしかできない。〜翻訳は三百六十五歩のマーチだ」〜

などなど、翻訳に対する考え方が正直に語られていて、翻訳家としてのあるべき姿を教えられた気がします。下の柳瀬さんの才気ばしった翻訳論より、この本の二人の方が飾り気がなくて学ぶところが多かったと思います。特に「愛情のある翻訳」という言葉が気にいりました。

 

「翻訳はいかにすべきか」 柳瀬尚紀  (岩波新書)

いま柳瀬さんが元気です。辞書や翻訳に関して書きまくっている、乗りに乗っているという感じですね。この本はいいですよ。翻訳を志すならこの本は読まなくっちゃ。サンプルとして二葉亭四迷の「あいびき」が再三出てきますが、これは僕が大学時代、国文学の授業で勉強したことがあるのでよく分かりました。柳瀬さんの「翻訳困りっ話」(河出文庫)は最初の章だけおもしろく、あとはこの人独特の駄洒落と悪ふざけの世界になってしまいます。「翻訳はいかにすべき」はさすが岩波、まじめな姿勢で最後まで楽しませてくれます。下の「広辞苑を読む」と合わせて大推薦します。

 

「広辞苑を読む」 柳瀬尚紀   (文春新書)

辞書のことがいとおしくなり、ますます好きになる本です。僕の手の届くところに広辞苑、大辞林がありますが、この本を通して親しみが感じられるようになりました。辞書の記述そのものを楽しむ姿勢が出てきたとでも言うか、辞書を読む喜びが生まれてきました。あわせて新潮文庫の「辞書はジョイスフル」もお勧めします。

 

「翻訳は実践である」  柳瀬尚紀    (河出文庫)

柳瀬さんの本ばかりが続いてしまいました。他にも読んでいるのですが、やっぱり面白さが違います。例によって柳瀬さんの駄洒落の世界に入ってしまって途中から辟易としてきますが、最初の「翻訳とは実践である」という章と、「翻訳とは文体の翻訳である」というあたりが面白いです。実際に翻訳の現場で苦しい思いをすると、柳瀬さんの憂さ晴らしがよく分かってくる気がします。翻訳の現場の苦しみのようなものが悪ふざけの隙間から垣間見れるようで共感がわきます。

 

「翻訳者の書斎」 宮脇孝雄   (研究社出版)                          

翻訳者は電話帳から通信販売のパンフレットまでなんでも必要、ということを教えてくれた本です。翻訳者はどういうふうに翻訳作業をすすめていくのか、具体的に分かって大いに参考になります。翻訳者の卵、必読の書ではないでしょうか。