弦楽四重奏徒然草3/30
クイケンSQ 「十字架上のキリストの最後の七つ言葉」 3/30 |
ロータスQ 1/25 |
ジャパン・ストリング・Q 11/4 |
アルテミスQのCD 6/23 |
アルテミスQの演奏会 6/1 |
カルミナQのヴォルフ、ベルク、シェーンベルク 5/6 |
SAWAカルテット 演奏会 5/5 |
オーロラQのメンデルスゾーンQ全集 12/9 |
トビリシ弦楽四重奏団の演奏会 12/9 |
ハイドン 27,29,30番 コダーイQ 11/25 |
スメタナ 1番 「わが生涯より」 |
バルトーク 2番 |
実演感想編 2/11 |
クイケンSQ ハイドン「十字架上のキリストの最後の七つ言葉」
クイケンSQのハイドン「十字架上のキリストの最後の七つ言葉」(DENON COCO-70520)これがすばらしい。
この曲は緩徐楽章ばかりが8曲も続く異常な曲です。変化の乏しいこの曲が実はとんでもない名曲なのです。じわじわっときます。夜中に勉強するときのBGMとしては最適の曲です。ハイドンの弦楽四重奏曲全集を出しているコダーイSQの演奏もすばらしいですが、ピリオド楽器で演奏するクイケンSQは、もっと静謐で、祈りに近いものがあります。
コダーイSQはより劇的に変化を持たせて演奏していますが、クイケSQンは淡々と、枯れた響きで、曲想に合っています。一度クイケンを聞くとコダーイの方がせかせかとせわしなく聞こえてしまいます。
他の曲ではどうか分かりませんが、とにかくこの曲に関してはコダーイSQよりクイケンSQの方が上ですね。
ピリオド楽器特有のキンキンと耳に痛い音はほとんどありません。適度のビブラートもかかっていて、聞きやすい演奏です。
今後は、クイケンSQのCDも集めていきたいと思います。
それにしてもハイドンは深い。
この感動を忘れない。とにかく感動。シューマンの弦楽四重奏を1・2・3と全部一晩で。
ロータスは去年ブラームス全曲という演奏会を松方ホールで聴いた。このときも悪くはなかった(このページの下の「実演感想編」に感想あり)。しかし今回のはどうだ。これほどまでにすごいとは思わなかった。ジャパン・ストリングQは「求心力の強い演奏」ということを看板にしているところがあるが、ロータスの前では色あせる。ロータスのこの集中力。曲への没入。
さて、去年のブラームス全曲演奏に比べて何がよかったのか?
1、セカンドバイオリンが、ドイツ人女性から藤森彩という人になった。プログラムの解説によると、藤森彩で落ち着く様子。まずこれが大きい。目立たないがしっかり弾いている。内声が充実しないとカルテットは面白くない。ましてやブラームス。シューマンも同じ。ロマン派は内声がしっかりしていないと音楽にならない。
2、曲が合っているということ。ブラームスより、シューマンの方がロータスの個性に合っている。ブラームスより歌があるということ。その歌いこみ方が、小林幸子の歌い方にぴったり合って、すごく感情がこもっていい。小林幸子の弾き方は好感が持てる。一音一音大事に感情を込めて弾いている。激しいところは斬り付けるように。しっとり歌うところは泣きそうに、あるいはとろけそうに弾く。ブラームスでは出せないこういう美質がシューマンでは遺憾なく発揮された。
最前列のど真ん中で聴いた。いや、見た。彼女たちがいかに高い志で音楽に向かっているかを。小林幸子の表情にひきつけられたし、ビオラの山﨑智子も歌いこみ方がすごかった。
チェロの斉藤千尋は華奢な体つきなのに、たっぷりとした音量を鳴らすし、本当に非の打ち所のないカルテットだ。
フェニックスホールでの演奏会を聞いた。曲目は「ラズモフスキー1番」「12番」。期待したが、ラズモフスキーが始まったとたんにがっかりした。正直に言って基本的にテクニックが足りない。この曲が、というのではなく、すべての基本が、世界の水準に達していない。演奏は日本人らしく、実直、誠実で好感が持てるところもあった。ファーストの久保陽子が2楽章の歌いこむところで、たっぷりとビブラートをかけて泣き節ともいうような歌い方をしたり、ところどころは聞きほれるようなところもあったが、それにしても、水準以下。残念だが、どうしようもない。
ロビーで売られていた「ハープ」「14番」のCDは、記念に買って、楽屋でサインをもらった。演奏終了直後の楽屋では菅沼さんが久保さんを「ヨーコちゃん」、久合田さんが岩崎洸さんを「コーさん」、など呼び合ってとってもいい雰囲気だった。久保さんが来客と声を上げながら抱き合ったり、ひとなつ
っこい面をみせたり、演奏家の素顔を見せてもらったようでうれしかった。
鳴り物入りで登場した日本純正のベテランカルテットは応援したい。
技術は世界水準には及ばないけれど、どこか応援したくなるようなまじめで、きわめて日本人的なカルテット。
CDには求心力の強い演奏などという宣伝文句がついている。が、やっぱりアンサンブルの微妙なずれなど気になって楽しめない。こんなもんだったのかな、と思ってメロスの「ハープ」を聴くと全然違う。やっぱりメロスぐらい研ぎ澄まされた技術をもってしてはじめて求心力も生きようというもんだ。
実演よりはCDの方がよい。
アルテミスQのCDをよく聴いている。演奏会の興奮から次第に冷めて、冷静にCDの音楽に耳を傾けると、またいろんなものが見えてくる。
この団体、若い分、まだ練れていない。実演のあの圧倒的なすばらしさに較べ、CDの演奏は、30パーセントぐらいしか実力が発揮されていないように思う。聴き所の作り方は実演ではうまかったのに、CDでは決まっていない。そういう若い団体の弱点が出たCDになっている。
それに意外にテンポもゆったり目で、アンサンブルにあたたかさがある。もっと機能的なきつい演奏、ウルトラアンサンブルとでもいうような演奏をしているのかと思ったら、これが全然違った。あたたかさを感じるアンサンブルと音色。そういえば、舞台でもそういうアンサンブルだった。舞台では技術面に注意がいってしまったが、音楽の作り方は神経質ではなく、ゆったり、おおらかだった。
バイオリンの二人が交替制ということもおもしろいところで、ナターリアより、ミューラーの方が芯の太い演奏をすることもわかってきた。
アルテミスQのCDを聴きながら、現代の演奏家が自分(たち)らしい演奏のスタイルを探しながら、模索している様子と、必死になって自分たちの個性を確立していこうとしているのが見て取れるようだ。
そう、ハーゲンQも、同じだ。自分たちのよって立つ新しい時代の弦楽四重奏を求めて、厳しい旅をしているようで、応援したい。今後もしっかりと、彼らの進んでいく様子を見つめていたい。
ああ、アルテミス。今でも胸がときめく。すごい。僕が体験したすべての演奏会をはるかに凌駕する。最高のカルテット。バイオリンの二人は交替制。聞くところによると、2人ともチャイコフスキーコンクールのファイナリストだそうだ。うまいはずだ。ソリストとしてもオーケストラをバックに堂々と渡り合える世界トップレベルの技量と音量。その二人がバンバン歌いまくり、弾きまくる。そしてそれに負けないビオラと、それを支えるチェロ。ビオラ、チェロの音量と技術も、これまたバイオリンに負けていない。
つまり、このカルテット、最高に上手い。そして音量がすごい。
今までこんなの聴いたことがなかった。
それにチェロ以外は立って演奏するのもよかった。チェロはひな壇(指揮台程度の壇)の上。立つとソリスト的な気分が増幅されるのだろう、3人とも体を揺らしながら、弾く。この姿がまた、今までのカルテットの常識を覆すほどインパクトがあった。三重協奏曲というのがあるが、まさに四重協奏曲といった趣。
曲は僕の大好きなメンデルスゾーンの2番。リームの4番。そしてドボルザークの13番。全部すばらしい演奏だった。4人とも技量はそろっているが、特に女性のナターリアの弾き方、音色、そして表情が気に入った。
演奏会後はCDを買い求め、全員のサインをもらい、握手をしてもらった。
カルミナのCDもすごいが、アルテミスも負けていない。カルミナはまだ実演を聴いていないので、ちょっと比較はできないけれど、しばらくはアルテミスに溺れそう。
あ、そう。ビルトオーゾ的な曲ばかり得意で、古典派はどうかなという思いがちょっとだけしていたのだけれど、アンコールがモーツァルトの14番の4楽章だった。これがまた素晴らしかった。よく知っている曲だけに、なおさらアルテミスの底力を見せ付けられてような思いで食い入るように聴いてしまった。この団体、本物だ。これは世界最高の弦楽四重奏団だ。
これはDENONのCD(COCQ-83489)のこと。このCDがすごい。才気煥発、音楽が踊っている。音楽が流線型で前のめりで、どんどん動いていく。並みのカルテットじゃない。このカルテットのCDはこれから集めていかなければならない。ベルクの弦楽四重奏曲はアルバンベルクQの名盤があるが、その比ではない。これを聴いてアルバンベルクQを聴くと、退屈で聴けたものではない。歌うカルッテトといってもちょっと違う。精緻なアンサンブルで、血の通った歌があり、若々しい。ハーゲンQのような分析的な演奏ではない。アルバンベルクQのような冷静なアンサンブルでもない。ウィーンQのお人よしのアンサンブルでもない。研ぎ澄まされた歌心。
このCDの選曲がまたいい。ヴルフ「イタリアのセレナード」、ベルク「弦楽四重奏曲」そしてシェーンベルク「浄められた夜」(弦楽六重奏版)。弦楽四重奏の世界を存分に楽しませてくれる一枚。
今僕の一番お気に入りのカルテットであり、CDである。
沢和樹がトップを務めるカルテット。沢和樹はその昔、沢和彦と言っていたころ、帰国コンサートを聴きに行った記憶がある。僕が小学校6年か中1だった。和歌山でのコンサート。僕にとって初めて自分ひとりで行ったコンサートだったのでよく覚えている。そのころから比べると、沢さんもでっぷりと太って、いかにも中年のサラリーマンと言った感じでちょっと残念でもある。
演奏はハイドンの「ラルゴ」、ショスタコービッチの8番、そして最後はスメタナの「わが生涯より」。なかなかいいプログラム。
生真面目にしっかりと弾き込まれて演奏のスタイルには好感が持てる。が、沢さんのバイオリンの魅力が今ひとつ欠ける。聴衆を引っ張る魅力が無い。上手だけれど、一生懸命弾いているけど、何かもうちょっとほしい、そんな物足りなさを感じる。大見得を切る必要はないのだけれど、歌いまわしの魅力に欠ける。
それでもなんと言うか、典型的な日本のおっちゃん(失礼)たちが、懸命にカルテットに打ち込んでいる姿は、感動的。「わが生涯より」が一番よく歌いこまれていた。いずれも水準以上の演奏で、日本の中堅カルテット健在を示してくれた。
フェニックスホールのセンターフォアードで聴いた。やっぱりカルテットはフェニックスホールぐらいの小さなホールでセンターフォアードで集中して聴くのがいい。演奏者の息使いを感じながら聴くと、CDでは決して得ることのできない感動を味わえる。
オーロラQのメンデルスゾーンQ全集 ナクソス
ハーゲンQにこだわっている。ハーゲンを聴きながらいろんなことを考え、教えられてきた。弦楽四重奏でこれだけ刺激的な演奏をするのだから、やはりこれからも聴きつづけていきたい。ところが、ハーゲンを聴いてきた耳にオーロラのメンデルスゾーンが新鮮に響いた。これには我ながら驚いた。何がそれほど良かったのか?
実際にはっとしたのは第2番のCD。ハーゲンの音とまるでちがう。温かく豊かだ。たっぷりと良く歌い、心がこもっている。とするとハーゲンQは人工的に過ぎるのか? そう。実際、ハーゲンのこのところのCDは、奇を衒ったところがある。何が何でも新鮮に、自分たちらしさを出してやろうと、躍起になっているように、聞こえる。もちろん、それをささえるだけのテクニックがあり、ある程度は成功しているようにも思える。しかし、真正面から正統的に取り組んでいる演奏を聞くと、ハーゲンの演奏が、小ざかしいように聞こえてしまうのも事実。
メンデルスゾーンというのもまた、新鮮に響いた理由だろう。メンデルスゾーンの弦楽四重奏は本当にいい曲ばかりだ。ロマン派でありながら、古典的形式はちゃんと踏んでいる。だから安心できる。それにこめられている感情はたっぷりとロマン派である。とってもバランスがよい。ロマン派の弦楽四重奏としては、シューベルト、シューマン、ブラームスより、ずっとできがいい。
トビリシ弦楽四重奏団の演奏会に行ってきた。すごい。僕が聴いた弦楽四重奏の演奏会のなかで、間違いなく最高の演奏会。プログラムからして、いい。
シューベルト 「ロザムンデ」
ギア・カンチェリ 弦楽四重奏のための「夜の祈り」
ショスタコービッチ 弦楽四重奏曲第7番、 「ポルカ」
シンプリアン・プルムベスク 「望郷のバラード」
スルカン・ツィンツァデ 弦楽四重奏のための「ユダヤ民謡による5つの小品」
アザラシヴィリ 「ノクターン」
こうしてプログラムを見るだけで、意欲的な取り組みであることがわかる。どこぞの団体のように、ありきたりの名曲ばかり繰り返して演奏しているのじゃない。
トビリシQについて、簡単に紹介すると、大阪シンフォニカーのコンマスだったバブアゼ氏(01,10から関西フィルのコンマスに就任)を中心に、大阪シンフォニカーの外国人演奏家で結成された団体。とにかく、バブアゼ氏がめちゃくちゃうまい。オケのコンマスをやっているだけあって、きかせどころを心得ている。「夜の祈り」と「ノクターン」の途中、すなわち、前半と後半のプログラムのクライマックスで、ステージの後ろの壁が、静かにゆっくりと持ち上がり、大阪梅田の夜景が眼前に広がる、という演出もあった。これはいいね。弦楽四重奏をききながら、都会の摩天楼をながめる。
プログラムは現代曲が大半だが、叙情的な曲ばかり。ツィンツァデやアザラシヴィリのCD、あれば買いたい。すばらしい。ああ、それに「望郷のバラード」はバブアゼ氏自ら弦楽四重奏
用に編曲したもので、譜面台には手書きの楽譜があった。こういうのを見ても、バブさんのすごさがわかる。
フェニックスホールもよい。小編成の室内楽にちょうどいい大きさ。
ハイドン 27,29,30番 コダーイQ ナクソス
ここ数ヶ月、自分の弦楽四重奏のレパートリーをふやすために、いろいろ現代ものを聞いてきた。ベルクやウェーベルン、シュスターコービッチなど。それにハーゲンQのCDも。そうした時に、まったく本当に、自然に、心に染みるように、入ってきた。こんなに自然で豊かだったのか、ハイドンは。驚いてしまった。
コダーイQのすばらしさは、いままでもずっと感心してきたが、あらためて、すごいと思った。自然だ。ハーゲンQの作為的な音にしばらく付き合ってきたせいか、コダーイQの音が自然で新鮮。
こうしてみると、ハーゲンQよりコダーイQの方がはるかに上かもしれない。少なくともCDの上では全然相手にならないほどコダーイQのほうが芸域が上だな。
スメタナ 1番 「わが生涯より」 パノハQ カメラータ東京
いいCDを買いました。パノハQは10数年前に大阪で聴いたことがあります。そのときはそんなにいい印象を受けませんでした。妙に線の細い音楽を作ると感じました。その時の曲も「わが生涯」でした。僕が東京で初めて買ったCDはパノハのモーツァルトのクラリネット五重奏曲。これはせかせかした演奏でがっかりしたました。とにかくパノハには裏切られたというか、期待しちゃいけないという気持ちがずっとありました。
だから今回このCDを買うのも、正直かなり迷いましたが、ジャケットがとってもいいのと、カメラータというレーベルに対する信頼から、思い切って購入しました。結果は、CDをかけて10秒後には、よし、いいぞ、とはっきりわかる素晴らしい演奏、すばらしい録音でした。
パノハQは自国スメタナのこの曲を知り尽くしているから、一音一音の扱いが丁寧で、心がこもっています。それにかなり思い切ったビオラの弾き方にも好感が持てます。
録音は鮮明で、やわらかい音色で収録されています。ディレクターの井阪さんの愛着が伝わってくるような丁寧に仕上げられた1枚です。
これでパノハQに対する感じ方を大いに変えないといけないと思いました。それと、もう一つは、室内楽は、オーケストラ以上に録音の状態がそのCDの仕上がりに大きな比重を占めるということも実感しました。このCD録音が素晴らしいです。
パノハQと井阪さんのこの曲に対する愛着のなせる技ですね。
バルトークって神経質で、オタクっぽくって、やたらに暗くて……。しかしところが、この人の音楽、心に沁みるんだよなぁ。弦楽四重奏の分野ではベートーベンの次に評価される、20世紀最大の弦楽四重奏の作曲者。1番から6番まで、それぞれどれをとっても個性的で面白い。特に6番は全曲べっとり悲歌でできていて、戦争とか世界の情勢とからめて語られる、現代音楽の傑作と評される。
しかし僕は2番が好きだなぁ。あの出だし。ああ、これぞ、バルトークっていう音がする。3、4番にみられる実験的な要素は少なく、前衛的でありながら、実はかなり、古典的。
1915年から1917年にかけて作曲。
演奏に関して。タカーチQの大阪でもコンサートには感動した。弾きこんでいるので自信にあふれ、一分のすきもない。洗練されたすばらしい演奏だった。この楽団、ファーストが替わって、良くなった。ビオラがとってもいい。前のファーストのタカーチの名前をつけた楽団なのに、そのタカーチが辞めた後もタカーチを名乗っている。とにかくタカーチより、新ファーストの方がくせがなくてうまいと思う。
実は、この演奏会でバルトークの2番の魅力に開眼したわけ。演奏会の持つ力は大きい。CDでは難解、晦渋だと思った音楽も、演奏会で感動すると、聞こえ方がすかっり変わってしまう。
逆にこんな体験も。バルトークの6番もアルバンベルクQで聴いたことがあるんだけれど、こっちは一向に面白くなかった。ちっとも感動しなかった。こういうこともあるんだね。アルバンベルクQは何回も実演で聴いているけど、あまり好きになれない。うまいのは評価するけど。
バルトークのCDに関しては、今のところエマーソンQの2枚組の全集しか持っていない。CDもいろいろ聴き比べることが大事で、聴き比べることによって、曲の特徴と、演奏者の特徴がよくわかる。バルトークのCDも今後集めていきたい。が、金銭的余裕が。
スメタナQ
チェロがへたくそ。現在の一流の技術には及ばない。僕が聴いたのはお別れ公演で、すでに全盛期をすぎて衰えていました。CDにもたいしたものはない。評判のいいモーツアルトの弦楽五重奏(スークが入っているもの)もチェロが不安定で聞きづらい。
パノハQ
これはスメタナの後継団体として目されているチェコの若手だが、いまいちだ。ファーストバイオリンがせわしない。弦楽四重奏でファーストに難がある団体は救いがたい。
011125「わが生涯より」のCDで考えが変わった。実演はその後聴いていないのでなんとも言えないが、少なくともこのCDは素晴らしい。
アルバンベルクQ
これはいい。4人のバランスもいい。ファーストのピヒラーがすばらしい。チェロもうまい。この団体はCDより実演がいい。聴衆を喜ばせてくれる。僕は2回聞きに行っているが、そのうちの1回はアンコールでのりにのって1時間も。
2001,5,26 アルバンベルクQの演奏会に行って来た。曲目はハイドン「騎士」、バルトーク6番、ベートーベン11番というもの。とにかくうまい。すばらしい。特にハイドンがよかった。バルトーク、ベートーベンと曲目が進むに従ってなじめない感じがして、だんだん気持ちがさめてしまった。
うまいのはうまい。でも何か違う。速くて鋭すぎる。音楽のとらえ方が、繊細で、いや繊細すぎるのか、どうしても楽しめない。くつろげない。ウィーンQでもセリオーソを聴いたが、こっちの方が楽しかったし、ぐいぐいと音楽に引きつけられた。最近では、タカーチQもよかった。アルバンベルクの何がよくないのだろう? 単に好みの問題か?
メロスQ
この団体もアルバンベルクとならんで現在世界最高の弦楽四重奏団。ベートーベンの弦楽四重奏の全集がすばらしい。実演は2回聴いたが、思った以上にミスが多い。アルバンベルクとは反対に実演よりCDの方がいい。とにかく芯の太い音がする。ベートーベンにぴったりだ。アルバンベルクは実演でもミスがほとんど全くと言っていいほどない。メロスに比べると音が細く繊細。メロスのドスの効いた音でベートーベンを聴いてしまった耳には、アルバンベルクのベートーベンは少し物足りない。アルバンベルクのモーツアルトはくつろげない。
ウィーンQ
この団体は4人ともウィーンフィルのメンバー。音楽の作り方が少しのんびり、ゆったりしていて僕の感性にぴったりだ。モーツアルトのハイドンセットのCDがいい。実演も2回聴いたがすばらしい。第2バイオリンがファーストに負けていないので、音がのびやかでバランスがいい。どことなく温かみがあって僕は好きだ。
ウィーン・アルティスQ
ファーストバイオリンがだめ。音が伸びない。まじめな若手で好感は持てるが、救いようがない。ただしアンコールで弾いたベートーベンの1番の2楽章はすばらしかった。
タカーチQ
これもチェコの中堅。パノハとライバル。技量的に言うとタカーチの方が上。エンマとのモーツァルトのクラリネット五重奏がすばらしかった。この団体もファーストに若干問題あり。うまいのだが音に伸びやかさがやや欠ける。ハイドンのCDではその点がよくわからないが実演で聴くと、ファーストの音が伸びに欠けるのが聴くにつれ不満になってくる。
01/3/14タカーチQを聴いた。この団体、ファーストとビオラが代わって、グレードアップした。いい団体になった。以前よりはるかによくなった。ファーストはくせのない演奏で、ビオラは線が太くよく歌う。ビオラのうまい楽団は弦楽四重奏としての厚みがでて面白い。バルトークの2番は本当に面白かった。こういう難解な曲は実演で集中して聴くに限る。いい演奏で集中して聴くと、曲の姿がわかってくる。僕も初めてこの2番の面白さがわかった。
ハーゲンQ
この団体はうまい。技術的には一流である。清潔な音作りをしていて好感が持てる。まだまだ若いので今後を期待したい。
ロータスQ
日本人4人の女性だけのクァルテット。ただし僕が聴いた演奏会ではセカンドはドイツ人の女性。とにかくファーストの小林幸子がうまい。ピントはりつめた緊迫感のあるバイオリン。好きだな、こういう弾き方。チェロもうまい。演奏会ではチェロの弦がきれて、斎藤千尋が楽屋に戻り、弦をはりかえ、舞台に戻ってくる時につまずいてこけて、危うく楽器をこわしそうになった。幸い、事なきを得たが、こういうハプニングがあった方が、演奏家の素顔が垣間見れるようで興味深い。演奏会ではブラームスの1〜3番までを一夜で全曲弾くというハードなもの。素晴らしいホットな一夜だった。
トビリシQ
大阪で活動するグルジア人バブアゼ氏の率いる団体。大阪でこのような世界的なレベルの団体が活動していることを喜びたい。テクニックも確かで、情緒的にもしっかり訴えるのもを持っている。レパートリーも日本初演などの演目を含み、意欲的。もっと演奏活動を活発にしてほしい。また、CDの発売も是非実現してほしい。
モーツァルテウムQ
京都まで聴きに。これ、よかったな。ウィーンQとはまたちょっとちがった、ウィーン情緒とでもいうのか、若々しくて伸びやかで、安心して聴けた。ハーゲンQのモーツァルトに辟易としていたから、ほっと安心して聴けた。やっぱりモーツァルトはこうでなくっちゃね。さて、会場ではメンバー持参のCDが販売されていて、2枚も買ってしまった。演奏終了後は、4人全員にCDジャケットにサインをしてもらって、全員と握手してもらった。演奏家を身近に感じることはいいことで、曲の、あるいは演奏の、息吹が直接感じられるようになる。
CDがあまり出ていないので、日本ではさほどなじみがあるとはいえないけれど、この団体、真面目にしっかり正統的な演奏をしていて好感が持てる。ショートプログラムを集めたCDもよし。