クラシックCD愛聴盤 目次 100111更新

2009年最もよく聞いたCD

1 ベートーヴェン ピアノ協奏曲全集 
アシュケナージ ピアノと指揮 
クリーヴランド管弦楽団 

アシュケナージの3回目のもの。弾き振りです。1989年に買っています。それ以降そんなに聞いてきたわけではないのですが、去年後半、何気なく聞いてみたところ、素晴らしい演奏をしていることに気がついて、それ以降はしばしば聞くようになりました。

ベートーヴェンのピアノということで、どうしてもドイツ的な演奏を期待してしまうところがあるように思うのですが、この演奏は、「軽く、しなやかで透明な響き」です。しかし軽すぎず、なんとも絶妙のバランスで、ベートーヴェンらしさを失わず、美音で弾き切っています。ベート ーヴェンのピアノはアダージ楽章がそうであるように、大変ロマンティックです。3番の2楽章なんか本当に大好きです。

歌うベートーヴェン、これにぴったりのがアシュケナージの弾き振りでした。
 

2 モーツァルト ヴァイオリン・ソナタ集
いろいろ

これはたくさん聞きました。もともとよく聞いていましたが、夏ごろから夢中になっていろいろ買い集めました。 ヒンク、デュメイ、塩川、グリュミオー、パールマン、スタインバーグ…結局、スターンとオイストラッフのCDを一番よく聞きます。 この二人が残るとは自分でも意外でしたが、安定感と、耳にやさしい録音。この二つが自宅で「ながら聞き」をするスタイルでは一番よく聞かれる条件になりますね。ナクソスライブラリーでは川田知子の演奏もデュオ・アマディの演奏も大好きです。
 
3 モーツァルト ピアノ・ソナタ全集  
ピリス

2回目の全集です。これは録音が素晴らしい。研ぎ澄まされた音でバランス良く入っているので、長時間聞いても疲れません。曲はどれをとっても素晴らしい。
 
4 ハイドン ピアノ・ソナタ全集 
ヤンドー

自分でもヴァイオリンを弾くのでどうしても今までは弦楽器やオーケストラ曲が中心になって来ましたが、ピアノの面白さに開眼させていくれたのがヤンドーのハイドンの全集です。この人のピアノも軽妙でハイドンの曲想にぴったりです。唸り声がときどき気にはなりますが。 ヤンドーを通してモーツァルトのピアノソナタに、そしてヴァイオリンソナタにと飛び火していく形で関心が広がりました。アシュケナージもその流れですね。こうして振り返ると結局ヤンドーのハイドンが2009年の原点のような気がしてきました。
 
5 バッハ ゴルトベルク変奏曲
木管四重奏(ホームカミング)が一番のお気に入りです。その他弦楽三重奏のものや、アコーディオン独奏。ギター独奏版は今までもよく聞いていました。ゴルトベルク変奏曲は、バッハの曲の中で最も聞きやすく飽きのこないものです。以前はチェンバロやピアノ版もよく聞いたのですが、木管の合奏は耳に優しいです。
 

2009年はナクソスのミュージックライブラリーの会員になり、音楽の聞き方が大きく変わりました。オンラインで聞きたい放題ですので、大量に曲が聞けます。
ナクソス音源のものだけではなく、相当な数のレーベルが参加しています。

一つのCDをじっくり聞きこむという聞き方ではなく、「つまみ食い」的な聞き方ができます。
あれこれ聞いて「いいな」と思ったものを「お気に入り」にと登録しておくわけです。
CDを買う数が激減しましたし、聞く曲の幅が圧倒的に広がりました。
また全然知らなかったアーティストの演奏にたくさん接するようになりました。

2010年はバッハとそれ以前の作曲家に関心を持って聞いていきたいです。

 

2008年最もよく聞いたCD

1

クレーメル ピアソラへのオマージュ1
 

ピアソラへのオマージュは3までありますが。1が一番好きです。
2

ヴァント ブルックナー交響曲7番 
ベルリン・フィル
 

ヴァントのブルックナーはどれもしんどいですが,7番が一番明るく楽に聞けます。録音もいいので5番や8番よりも聞く回数が増えています。
3 プレヴィン R.シュトラウス
ばらの騎士 管弦楽曲集
これがね,なかなか飽きなくていいんです。精緻な演奏です。
4 ケンペ R.シュトラウス
ティルオイレンシュピーゲルの愉快ないたずら,ドン・ファン,英雄の生涯
ここから3つはケンペ・シュターツカペレの管弦楽選集から。この選集はすばらしい。録音も演奏も。じっくり味わえるCD群です。この選集によってR.シュトラウス開眼と相成りました。もっともきっかけは小学館のオペラのDVD『ばらの騎士』です。これを見てR.シュトラウスに興味を持ち,この選集を購入したわけです。

今までは,マーラーやブルックナーは聞いても,R.シュトラウスはあまり…と思っていたのですが,2008年の僕の音楽上の最大の発見はピアソラとR.シュトラウスですね。

5 ケンペ R.シュトラウス
メタモルフォーゼン アルプス交響曲
6 ケンペ R.シュトラウス
ツァラトゥストラはかく語りき 死と変容
7

ヒラリー・ハーン バーバー
バイオリン協奏曲
 

ヒラリー・ハーンへの開眼も大きかったです。最初はバッハの「シャコンヌ」のCD購入から始まりました。それからハーンの手に入るCDは全部買いました。中で一番よく聞くのがこのバーバーです。他のCDも気に入っています。
ハーンには歌とまじめさと軽さがあります。軽過ぎず,かつ重過ぎない。ちゃんと自分を持っていて,押し付けでないところが好感が持てます。今後もずっと聞いていく人になりそうです。
8

クレーメル エイト・シーズンズ
 

ビバルディとピアソラの四季を合わせてエイト・シーズンスとしたもの。これが素晴らしい。ピアソラのところは言うまでも無く,ビバルディのところもやっぱりクレーメルは違います。
9 ヘンデル 『エジプトのイスラエル人』 輸入版のCDなので,演奏者等あまり詳しくわかっていません。これ,うちの嫁さんが2009年2月に合唱団で歌うもの。嫁さんの練習用に買って,車でいつも聞いています。いつも聞いていると愛着が出てきます。それにこの曲,有名ではないけれど,相当な名曲だという ことと,演奏も素晴らしいということがわかってきました。有名でない曲,全然知らない演奏家のCDにもまじめに付き合うべきだということが今回よくわかりました。
10

100モーツァルト
 
 

結局やっぱりモーツァルト。このシリーズ2セットあるので合計20枚。どのCDを特によく聞いたとかではなく,この20枚まんべんなく結構聞いています。シリーズ全体でベスト10にノミネートです。楽章ごとに聞くといろんな発見があって,「あれ,こんなんだったっけ。 」「こんなにいい曲?」と思う瞬間がかなりあります。それに演奏もとってもいいので驚きです。

こうして2008年のCD愛聴盤を振り返ってみると,
 ベートーベン,ハイドン,それに弦楽四重奏曲が無いのと,ブルックナーが減っているのがわかります。
ブルックナーも4,5,8,9番ではなく,7番というのも自分でも意外です。
それほど聞く曲の好みが変わったということです。
2008年は, R.シュトラウスとピアソラ(それに付随してクレーメル再発見)と
ヒラリー・ハーンとの出会いに集約される1年だったようです。
それからボザールのジュピティー301というスピーカー(私の愛用品参照)との出会いも大きかったです。
このスピーカーによって聞く喜びを再発見しました。
置く位置も工夫して部屋全体が鳴るように感じています。
精緻なよい録音,オーディオ的にも面白いものを選択する傾向が出てきたかもしれません。

2009年にはどんなCDと出会えるか楽しみです。

 

バッハ フランス組曲   グレン・グールド 
  バイオリン協奏曲全集  アーノンクール 
  ゴルトベルク変奏曲 中野振一郎 
  ゴルトベルク変奏曲 <ギター版> ヨージェフ・エトヴェシュ  キングレコード 
  ゴルトベルク変奏曲 <弦楽三重奏版> シトコベツキ コセ マイスキー 
  ゴルトベルク変奏曲 エディット・ピヒト=アクセンフェルト 
  無伴奏バイオリンのためのソナタとパルティータ  <ギター版> 福田進一 
  無伴奏バイオリンのためのソナタとパルティータ 山下和仁
  無伴奏チェロ組曲 <ヴィオラ版> 今井信子  
ハイドン 交響曲6,7,8番 ニコラス・ウォード  ノーザン室内管弦楽団
チェロ協奏曲1,2番  チャン・ハンナ
  バイオリン協奏曲1番 チョーリャン・リン ネヴィル・マリナー ミネソタ交響楽団 
弦楽四重奏曲 op64  コダーイ弦楽四重奏団
  弦楽四重奏曲 op77 コダーイ弦楽四重奏団 
ハイドン
ドボルザーク
アダージョ  ウィーン弦楽四重奏団 
モーツァルト ヴァイオリンソナタ  川田知子 小林道夫 
  ピアノ四重奏曲  ウィーン弦楽四重奏団 遠山慶子                     
ピアノ協奏曲   ブレンデル  マリナー  アカデミー                                  
  ピアノ協奏曲第25番 グルダ アバド ウィーン・フィル 
  ピアノ四重奏曲 ブレンデル  アルバンベルク弦楽四重奏団 
  バイオリン協奏曲全集 グリュミオー コリン・デイヴィス 
  ピアノソナタ集ーー2台のピアノのための(グリーグ編曲) リヒテル=レオンスカヤ 
  100曲モーツァルト 
  フルートとハープのための協奏曲 フルート協奏曲  パトリック・ガロワ 
  後期交響曲集 ワルター コロンビア交響楽団 
ベートーベン 交響曲第6番「田園」 名盤比較
  交響曲3番「英雄」カラヤン ベルリンフィル 
パガニーニ バイオリン協奏曲第1番 五嶋みどり スラットキン ロンドン交響楽団 
シューベルト 交響曲2、3、8番 ブロムシュテット ドレスデンシュターツカペレ
  冬の旅 比較  
メンデルスゾーン 弦楽五重奏1番、2番 
  交響曲第3番「スコットランド」 エストマン 指揮 オランダ放送室内管弦楽団 
ドボルザーク 弦楽四重奏のための「糸杉」  ウィーン弦楽四重奏団
  弦楽四重奏曲 第12番「アメリカ」 ウィーン弦楽四重奏団 
ショパン 夜想曲全集 仲道郁代 
ブラームス ハイドンの主題による変奏曲  コリン・デイヴィス  バイエルン放送交響楽団
  交響曲全集 カラヤン ベルリン・フィル 
チャイコフスキー 「眠れる森の美女」全曲 アンドリュー・モグレリア指揮 コシツェ・フィル 
  「眠れる森の美女」全曲 パリ・オペラ座バレエ ルドルフ・ヌレエフ演出 DVD 
  「白鳥の湖」全曲 ダニエル・バレンボイム指揮 ベルリン・シュターツカペレ 
ラフマニノフ ピアノ協奏曲第1番・第2番 クリスティアン・ツィマーマン 小沢征爾式 ボストンフィル
ヴィニアフスキー バイオリン協奏曲 第1番 第2番 イツァーク・パールマン ロンドン・フィル 小沢
ブルックナー  交響曲5番 朝比奈隆 新日フィル
交響曲9番 朝比奈隆 東京都響
  ブルックナー交響曲全集 オイゲン・ヨッフム ドレスデン・シュターツカペレ 
  ブルックナー交響曲 聞き比べ ヨッフム 朝比奈 ヴァント チェリビダッケ 
ボロディン 交響曲2番 ゲルギエフ ロッテルダムフィル
カリンコフ 交響曲1、2番 クチャル ウクライナ響
バルトーク バイオリン協奏曲 チョン・キョンファ
ビオラ協奏曲 ホン・メイシャオ
白井光子のCD  
ギドン・クレーメルのCD 
フリードリッヒ・グルダのピアノ 
ハインツ・レーグナーの演奏 

バッハ  フランス組曲  グレン・グールド 

グールドのバッハは学生時代から20代後半によく聞きました。でも最近は疲れるのであまり聴かなくなってしまいました。今でも時々聞くのがこの「フランス組曲」です。フランス組曲はバッハのピアノのなかでも最も叙情性に富んだ曲で、グールドの理知的な演奏と、絶妙なバランスを保っています。これが「平均律」になるとちょっとしんどくなり、イギリス組曲に至っては息が詰まりそうになります。カチャカチャ速いテンポでやられると、イライラしてきます。その点、フランス組曲は、しっとりとしたところが、ちょうど半々ぐらいの割合でまじっているので 聞きやすいですね。
グールドの演奏は、縦の線をそろえるところに、異様なほどの神経を使っていて、他のピアニストとは全然違った弾き方をします。縦の線がピッタリそろって、音の粒が際立って、きれぎれなのに、粘着質のところがあります。不思議な魅力です。きれぎれなのに粘着質というのは「ゴルトベルク変奏曲」に最も顕著に表れています。他グールドではブラームスの「間奏曲集」がいいですね。これは縦の線をわざとずらしながら、ロマンティックに弾いているところが面白いです。バード、ギボンズの小品集も、素晴らしい。
実はグールドの弾くベートーベンのピアノソナタ集もかなりの枚数持っていましたが、もう6,7年前になるでしょうか、聞くのがいやになって、全部売ってしまいました。ベートーベンのソナタでは30.31.32の入っている1枚だけを手元に残しました。この一枚だけはまだ 聞けます。
グールドも他のCDよりはここに挙げたフランス組曲やブラームス、ギボンズのCDでは唸り声が少ないように思います。それだけグールドらしさからいうと、少しおとなしいCDかも知れませんが、その分長く付き合えるCDのようです。

バッハ バイオリン協奏曲 全集  アーノンクール指揮  アリス・アーノンクール=バイオリン 

全集といっても1枚もの。バッハの曲は宗教曲はしんどいのでほとんどききません。器楽、中でもバイオリン協奏曲が好きです。以前から何枚か持っていましたし、2つのバイオリンのための協奏曲は学生時代友だちと合わせて遊んだ経験があります。アーノンクールの演奏は個性的であくの強いものも多いのですが、このCDは本当にじっくり聞かせてくれます。へんなことは一切していません。オーソドックスで少しゆったり目のテンポでしっとり歌っています。演奏はウィーンコンツェルトムジクスでバイオリンの独奏は奥さんのアリス・アーノンクールです。オリジナル楽器を使っての演奏です。オリジナル楽器というとアクセントを強調したり、キンキン響いたりするところがありますが、このCDは本当に落ち着いて安心してきけます。それにグリュミオーなんかの軽い演奏とは違って、深みを感じさせます。「2つのバイオリンのための協奏曲」の2楽章なんか本当に心に沁みますね。深いといっても重すぎないのがまたこのCDのいいところです。バッハのバイオリン協奏曲では僕の知る範囲では断然ナンバー1のCDです。

バッハ ゴルトベルク変奏曲  中野振一郎  デンオン

中野振一郎は京都出身の世界的チェンバリスト。しかも僕と同じ1964年生まれ。うれしいですね。同世代の人が世界的に活躍するのを見るのは。僕は今まで中野さんのステージを2回見ています。1回はテレマンアンサンブルの演奏会のゲストで、トークと演奏。これが実に楽しい。中野さんはそうとうなおしゃべりで、噺家のようにユーモアたっぷりのしゃべりかた。演奏はいうまでもまくすばらしい。もう1回は、大阪シンフォニアの定期演奏会。ハイドンのチェンバロ協奏曲。この人がステージに立つだけで、何やら花があって、人をひきつける。とにかく同世代の芸術家として一番注目し、一番期待しています。
さて、このCDは2枚組。特長はゴルトベルク変奏曲を、ピリオド楽器とモダンチェンバロの2台でひき分けているところ。分かりやすく言うと、普通のチェンバロでの演奏が1枚目、旧時代のチェンバロでの演奏が2枚目。ただ楽器を変えているだけではなく、演奏もかなり違います。僕は2枚目の演奏が好きです。楽器の音色もいろいろ工夫を凝らして変化をつけながら、かつ、たんたんと弾いているところが素晴らしい。
僕は今までグレン・グールドの2回目の録音と、シトコベツキの弦楽三重奏版でゴルトベルクを聞いてきましたが、これからは中野さんのモダン楽器のゴルトベルクが愛聴版になりそうです。

ゴルトベルク変奏曲  エトヴェシュ  キングレコード

ゴルトベルクのギター版。エトヴェシュのオリジナルです。バッハの曲は、いろんな楽器や演奏形態に編曲されて演奏されます。それほど曲自体の構成がはっきりしていて、編曲に耐える曲だという証拠だと思います。ここでも、ゴルトベルクがギターによって、本当に魅力的に再現されています。ピアノのたたく音や、チェンバロの引っ掻く音、弦楽器のこする音に疲れた耳には心地よく響きます。それにこのエトヴェシュの演奏もゆったり目のテンポで、変奏曲間のテンポの差をあまりつけていません。これが、退屈 にもなるところですが、かえってバッハらしく、淡々と聞こえて、僕は好きですね。
上の中野振一郎のCDもいいけれど、今後はこちらの方が愛聴盤になりそう。中野振一郎は才気走って、ちょっとテンポを揺らしすぎているから、疲れるところがあります。それに対し、エトヴェシュのギター版は、ひたすら淡々と進行していきます。

ついでにゴルトベルク変奏曲の弦楽三重奏版<シトコベツキ編曲>のレコードも学生時代の愛聴盤でした。こちらはバイオリンの音がきつく録音されていて、耳に痛く、残念ながら 聞くのをやめてしまいました。リニューアルで耳に優しくなっていれば買いたいところです。

2001/12/30付けたし。車でよく聞きます。ドライブ用にはもってこいです。それに聞けば聞くほどこのCDが好きになってきました。このエトヴェシュという人、よく知りませんが、ただものじゃない。バッハは暗くて、辛気臭くなりがちですが、この人の演奏は、ほんとふわっとあったかい。  

ゴルトベルク変奏曲 <弦楽三重奏版> シトコベツキ コセ マイスキー

これは学生時代富山でよく聞いたLPです。それ以来聞いていなかったのが,インターネットでCDを見つけて最近購入したもの。やっぱりいい。ピアノなりチェンバロの独奏もいいし,ギター版もいいですが,合奏になるとさらに面白さが加わって,いくら聞いてもあきません。サブタイトルに"In memoriam Glenn Gould"とあります。確かに演奏はグレン・グールドの演奏とよく似ていて,テンポの取り方や,3曲ずつセットにして演奏する方式などグレングールドの演奏からヒントを得ていることが伺われます。が,なにより,鍵盤やギターなどの持続性のない音ではなく,弦特有の長く持続してビブラートをかけて歌いこめるよさが生かされています。3人ともうまいです。ビオラの音がバイオリン,チェロに負けていないのもうれしいです。演奏も編曲も録音も申し分ない素晴らしいCDです。

PS. 上の項目で「音がきつく録音されていて」というくだりがありますが,再販された輸入版のCDは大丈夫です。

ゴルトベルク変奏曲 エディット・ピヒト=アクセンフェルト

これも富山時代によく聞いたもの。それを上の一枚と一緒に久々に聞きました。やっぱりいいです。才気走った中野振一郎のものよりも,淡々とやさしく音楽が進みます。テンポがゆれません。遅めのテンポで,じっくりやさしく。何も変なことをしません。アクセンフェルトが出てきません。それがすばらしい。淡々としてやさしい 弾きぶりが,徹頭徹尾守られています。途中で崩れたり,感情が入ったりということがありません。これは稀有なことです。ひたすらバッハに打ち込んでいる姿がすがすがしいです。かといって,リヒターのように狂信的で神経質な,バッハにひれ伏すような滅私の演奏ではなくて,余裕があって明るさがあって,う〜ん。どこからこのやさしさと明るさが出てくるのだろう。そういう意味でまさに偉大な演奏なのだと思います。

バッハ 無伴奏バイオリンのためのソナタとパルティータ <ギター版> 福田 進一 デンオン

 学生時代バイオリンを弾いていたのでこの曲に対する思い入れはたっぷりあります。弾けもしないのに楽譜を持っていますし、CDも実演もたくさん聞いてきました。実演では鄭京和(シャコンヌだけですが)、CDではシェリングとミンツのものが好きです。ただ、やはり家で日常的に 聞くには重すぎますので、20代の時のようには聴かなくなっています。20台前半はこの曲をしょっちゅう、それこそ毎日のように聞いていました。シゲティやクレメル、ミルシテインのCDなども 聞いていたのですが、数年前にこの3人のCDは処分しました。あまりに疲れるのです。今はたまにシェリングかミンツを聞くぐらいです。聞く回数は減ったものの、この曲に対する敬愛の念は薄らいでいません。
さて、この曲のギター演奏版のCDを買ってみました。一言ですばらしいです。バイオリンのこすりつける甲高い音がなく、弦をはじく音が心地よいです。バッハの音楽は押し付けがましいところがあります。それがバイオリンの音で奏でられるとさらに強調され、よほどこちらの心理状態がそれに合わないと拒絶反応を起こしかねません。ギターでの演奏は甲高くなく、ガチャガチャやかましくなく、控えめで、しかもバッハ特有の構造的な世界を現出させてくれます。
福田進一の演奏がまた素晴らしい。しっとり落ち着いた音色。ゆったり目のテンポ。
年齢とともに音楽に対する嗜好が変わってきました。落ち着きや、安心といったものを求める傾向が強くなったようです。刺激のきついものを我慢して受け入れる、あるいは音楽とともに陶酔するということが少なくなってきました。そういう今の僕の耳にぴったりくるのがギターによるバッハ演奏です。

バッハ 無伴奏バイオリンのためのソナタとパルティータ  山下和仁 RCA 2回目の録音
 

上の福田進一のギターでも書いたけれど、これも耳に優しく響きます。しっとりと落ち着いていて、じっくり弾き込んできるところが素晴らしい。福田進一は抜粋でしたがこれは全曲です。
これ以外にも、イェラン・セルシェル、ニコラス・ゴルセスのギター版のバッハの無伴奏も持っています。いずれもバイオリンとは一味も二味も違って面白いです。バイオリンの音はどうしても 引っ掻く音ですので、耳が疲れます。その点ギターは静かで耳に優しく、一日中聞いていても飽きません。
山下和仁の演奏は、深みがあります。変なことは一切していません。旋律の歌わせ方も、リズムの切れや安定感、どれをとっても安心できます。音楽性ということでも、バイオリンの名手たちに引けをとりません。ギター版のバッハ(僕が持っている中では)では最高の演奏です。深いばかりではなく、軽みとか、弾み、勢いという要素も忘れていません。素晴らしい。

バッハ  無伴奏チェロ組曲  <ヴィオラ版>  今井信子   フィリップス

これはヴィオラで演奏しているちょっと変った版です。僕はロストロポーヴィッチとフルニエのCDを持っていますが、それよりずっといいです。ゆったり、たっぷり歌っていて、音色が渋くて優しくて……。チェロのように重過ぎず、ヴァイオリンのようにきつ過ぎず、耳に心地良く響きます。それに単に楽器を替えて録音したというだけではないところがさすが今井信子です。これだけしなやかに歌いきっているバッハもいいものです。

ハイドン 交響曲6,7,8番 ノーザン・ウォード ノーザン室内管弦楽団  ナクソス      

ハイドンの交響曲は多すぎてとっつきにくく、どれを聞いても強い印象に残らないと感じている人が多いのではないかと思います。僕も実は数年前まではハイドンなんか、と思ってました。ところがじっくりつきあうと、こちらの心にぴたりと寄り添ってきてくれるのがハイドンです。後期の作品が有名ですが、交響曲も弦楽四重奏も初期、中期にいい作品がたくさんあります。後期より魅力的な作品が多いと思います。ナクソスは安いので、ハイドンの初期、中期の作品も是非聞いてみてください。みないい演奏です。 

ハイドン チェロ協奏曲 第1,2番 チャン・ハンナ  シノーポリ ドレスデン  EMI

チャン・ハンナは韓国のチェリスト。音色が清潔でとっても感じいい。バックのオケの音色も申し分なし。それにしてもこの2曲のもっている上品な清楚な香りはどうだろう。ハイドンはそうとうなロマンチストだったのだと思います。特に2番がすばらしい。以前大阪シンフォニカーの定期で、堤剛の演奏をきいたが、本当に感動した。ハイドン入門に最適の曲。

ハイドン バイオリン協奏曲 第1番 チョーリャン・リン ネヴィル・マリナー ミネソタ交響楽団

ハイドン好きの僕にとっては、ハイドンのバイオリン協奏曲のCDが少ないのが残念です。だからなおさらこのチョーリャン・リンのCDは貴重です。台湾出身のチョーリャン・リンはロマンティックな音色でポルタメントをかけながら、ちょっと現代では珍しい独特の歌いまわしを持っているバイオリンニストです。いったん彼の魅力にとりつかれると、他のバイオリンニストでは物足りなくなります。このハイドンもそうです。シベリウスの協奏曲もそうですし、バイオリン小品集と題したCDでも彼の魅力がうかがえます。僕は2回彼のコンサートに行っていますが、実演では音色の木目の細かさが心地よかったです。それに若い女性が客席に多かったのも印象に残っています。大好きな曲を大好きなバイオリンニストが演奏している僕にとっては大事な一枚です。

ハイドン 弦楽四重奏曲 Op.64  コダーイクヮルテット  ナクソス               目次へ 

25年間クラシックを聞いてきて、大学ではオケでバイオリンを弾いてきました。いろいろな作曲家を遍歴してきて今たどり着いたのが、ハイドンです。ハイドンの音楽はこちらの感情を煽ってこないから、静かに付き合っていられる。コダーイQの演奏もすばらしい。僕はナクソスのハイドン弦楽四重奏を全部そろえるつもりで集めています。ハイドンは若い時の作品からみなそれぞれ味わいがあっていい。一部の有名な曲でないものがかえって味わいが深かったりします。弦楽四重奏曲では作品33や68などの初期、中期のものが、軽みとしなやかさがあって僕は大好きです。 

ハイドン 弦楽四重奏曲 Op 77   コダーイ弦楽四重奏団  ナクソス

同じくコダーイ弦楽四重奏団の演奏でハイドンの晩年の作品です。これはもうモーツァルトを越えています。モーツァルトも「ハイドンセット」の6曲は素晴らしいけれど、それ以降の弦楽四重奏は正直言って楽しめません。どこか陰があり、ハイドンセットのように安心して身を任せることができません。ベートーベンの弦楽四重奏にも同じことが言えます。中期のラズモフスキーや10番、11番、12番までは楽しめるけれど13番以降はしんどすぎます。たまにはいいと思いますが、楽しめません。

ところがハイドンはどこをとっても楽しめます。初期から晩年の作品まで、聴衆を安心して楽しませてくれます。特にこのop77はがっちりとした構成感と、響きの厚み、そして精神の澄み切った高み。部分的にはベートーベンの後期に似た響きがします。うっかりすると聞き間違えるほど似ているところもあります。しかしベートーベンのようなしつこさはなく、がっちりとした手ごたえを残してくれます。軽くて、明るくて、重くて、中身がしっかりつまっていて、さわやか、という絶妙のバランスの曲です。

ハイドン & ドボルザーク   アダージョ   ウィーン弦楽四重奏団 カメラータトウキョウ

ハイドンとドボルザークの弦楽四重奏曲からアダージョの楽章だけを集めたCD。こういうオムニバスが最近はやっています。「アダージョカラヤン」以降の傾向です。この手のCDはクラシック通としては敬遠したいところですが、実際買ってみるとなかなかいいもんです。CD1枚分ずっと安心して聞いていられます。一曲一曲を聞くのではなく、BGMとしてのCDですね。家でくつろぐ時、読書する時、こうしてパソコンをいじる時は、均質な癒し系のCDがいいですね。「アダージなんとか」もいいですが、ハイドンとドボルザークの弦楽四重奏曲に限定しているところが嬉しいです。弦楽四重奏入門としてもいいでしょうね。

なお、同じシリーズで「モーツアルトのアンダンテ」、「シューベルトのアンダンテ」というCDも出ています。僕は全部もっています。全部いいですよ。

モーツァルト ヴァイオリンソナタ 川田知子 小林道夫

僕はモーツァルトのヴァイオリンソナタが大好きで,かなりの枚数を持っています。グリュミオー,デュメイ,ヒンク,パールマン,オイストラッフ,スターン,塩川悠子,ヒラリー・ハーン,内田光子=スタインバーク…そんな中,一番すきなのが,この川田=小林の演奏です。端正で生真面目,誠実,清潔, 丁寧,上品,こんな形容がどんどん出てきそうな演奏です。
モーツァルトのヴァイオリンソナタは派手な技巧がないぶん演奏者の音楽性がもろに出てしまいます。そして録音も難しいと思います。ピアノとヴァイオリンのバランスが特に。
ヴァイオリンを少し控えめにして,あまり高音域がキンキン響かないのがいいです。ピアノもふっくらとやわらかく取れているのがいいです。テンポもゆったり目で…。そういう僕の好みにピッタリなのがこのCDです。次はヒンク=遠山,次はスターンかオイストラッフ。

モーツァルト ピアノ四重奏 ウィーン弦楽四重奏団 遠山慶子  カメラータトウキョウ

気の合った快演。家でCDで音楽を聞く時はあまり深刻で重くないほうがいいですね。じっくり聞くより、パソコンをいじりながら、本を読みながらということが多いです。皆さんもそうではないかと思いますが。そういうときにはハイドンかモーツァルトの室内楽がいいですね。遠山さんのピアノはふくよかで澄み切っています。ファーストバイオリンの音色が、他のウィーンSQのCDとくらべるとちょっときつめに録音されている気がします。それが若干耳ざわりですが、その分明るいともいえます。とにかく 聞いていると気持ちがほぐれて、楽しくなってきます。

モーツァルト  ピアノ協奏曲  ブレンデル  マリナー  アカデミー

これは2枚組の2セットとして再発売されたものです。曲目は9、15、20、21、22、23、24、25、27番とコンサートロンドが2曲。僕は以前、内田光子とテイトのものが発売されるたびに買って、ほぼ全部そろっているはず(はずというのは終りのほうになってきて急に関心が薄れてしまったから全部そろっているかどうかはどうでもよくなってしまったのです)。内田光子のCDが出始めた頃は、なんというのか無批判にいい演奏だと信じて買って 聞いていました。今でも悪い演奏だとは思わいませんが、ブレンデルの演奏を聞いて内田光子が色あせてしまいました。ブレンデルの方が音の粒立ちがよく、クリアーで明るいです。音楽の作り方もしっかり構築性を感じさせます。重くなくすっきりしながら、内田光子のようななよなよとしたところがありません。
内田光子に限らず、東洋の女性演奏家の演奏は繊細で、清潔感があっていいのですが、繊細すぎるところもあります。チョンキョンファのバイオリンもそうですし、チャンハンナのチェロにもそういうところがあります。繊細でなよなよしたところが気になり始めると、楽しめなくなりますね。
ほかにグルダや、ピリス、ハスキルなど持っていますが、ブレンデル、アカデミー盤が一番バランスがいいように思います。曲としては22番が一番好きです。

モーツァルト  ピアノ協奏曲第25番 グルダ アバド ウィーン・フィル UCCG-3329

これは27番とカップリングなっているCD。グルダ=アバドには20番21番のCDもあります。こちらも素晴らしいです。2021の方は才気走った溌剌とした演奏で、一般的な世間の評判はこの2527のCDよりも高いようです。グルダ自身もそのように評価しているようです。僕も2021のCDも好きですが、僕にとっては誰が何と言おうとこの25番が一番の名演で名曲です。
モーツァルトのピアノ協奏曲は名曲ぞろいで名盤も沢山あります。しかし安定感と透明感。そして楽しさと安らぎ。これがバランスよく溶け込んでいるのがこのCDの25番です。27番も素晴らしい演奏なので、このCDを聞く機会が増えています。
録音も秀逸でウィーン・フィルの音がとってもチャーミングに入っていますし、グルダのピアノの音も、透明感があって粒立ちもしっかりしています。オーケストラとのバランスも素晴らしい。曲のテンポもゆったり目です。
自宅で、勉強や読書などしながらの「ながら聞き」で繰り返し聞くためのCDというものの評価は、音楽評論家とはまた違う要素が混じるようです。
自宅の音響環境(ステレオなど)によっても、聞くスタイル(ながら聞き・集中して聞くなど)によっても、CDの評価は変わってきます。僕のこのページの愛聴盤は「日常ながら聞きCDの名盤」そういうことになりそうです。そういう意味では僕はフルトベングラーのCDは評価しません。バイロイトの第9や田園はそれな りによいとは思いますが、ほとんど聞きません。チェリビダッケやヴァントも…彼らは実演向きだったのでしょう。自宅の小さな部屋で、小さなスピーカーで、小音量で、夜中にながら聞きするスタイルには合いません。
最近よくある「アダージョなんとか」なども結局聞き手の聞くスタイルにマッチした企画だったからヒットしたのでしょう。
このCDはそういう意味で僕の聞くスタイルと嗜好にぴったりです。ただしこのCDは「アダージョなんとか」のようにこちらの日常生活に迎合しているのではないところが、またもって素晴らしい。
ずいぶん勝手な聞き手ですね。

モーツァルト ピアノ四重奏曲 ブレンデル アルバンベルク弦楽四重奏団

アルバンベルク弦楽四重奏団の演奏会の会場で買いました。とにかく現在世界最高の弦楽四重奏団です。ものすごくうまいです。どこをとってもうまいです。しかしどこかなじめない、好きになりきれない楽団です。記念に買ったCDがこれ。このCDはBGMとしては最高です。ブレンデルのピアノの音が粒が際だってきれいです。アルバンベルクの音もライブ録音だからか、距離感があって適度に耳に優しく聞こえます。癖のない透明感のある演奏で、距離感があるので、ぎすぎすしていません。あえて言えば、最後の拍手がよけいか。それ以外は安心してかけていられるCDです。

モーツァルト バイオリン協奏曲全集 グリュミオー コリン・デイヴィス

もともとよく聞いていたCD。今夜は特に心に静かに入っていく。

考えられる理由の第1。韓国がワールドカップでスペインに勝った。うれしいが何かとても疲れた。韓国のあの騒ぎようもちょっといやになってきた。そういうがさがさした世界から、逃げたかった。

理由その2。ステレオの調子が良くないので、パソコン付属のおもちゃのようなスピーカーで聞いている。薄っぺらな音。薄っぺらだが、この演奏は芯の太い演奏をしているので、結構 聞ける。

おおらかで平明な、健全な世界。モーツァルトのよさがバイオリン協奏曲にすべて出尽くしている。特にこの演奏はグリュミオーの弾きっぷりと、デイヴィスの指揮が完全にモーツ ァルトの世界にはまっている。非の打ち所がない。理想的な演奏。モーツアルトのバイオリン協奏曲としてはこれ以上のものは求められない。癒し系などというのではないが、くたびれた心が癒されるのを感じる。

ピアノソナタ集ーー2台のピアノのための(グリーグ編曲) リヒテル=レオンスカヤ WPCS-4712

これはめずらしCDです。モーツァルトのピアノソナタにグリーグが第2ピアノを伴奏として付けたもの。ヘブラーとホフマンによる「2台・4手のためのモーツァルトのピアノ作品集」も名盤でよく 聞きますが,グリーグのは最近買ったばかりです。これはね,すごいいいですよ。あまり評判にもなっていないようですが,超お勧めです。まず,ピアノ一台の退屈さがありません。音が豊かに絡み合って,しかも透明感があります。音量がある分陰影や深みがあります。決して重くならず, 聞く楽しみだけが増えて,このCDに親しむと,一台だけのオリジナルのピアノソナタがちょっと薄味に感じられるようになります。それほど楽しいということ。

日本人はオリジナルが大好きで,ちょっと手が入ってっいたりすると敬遠する傾向がありますが,これはアレンジという域をこえて,モーツァルトとグリーグの共同作品になっています。音がきらきらいっぱいで楽しく,味わいの深いCDです。

100曲モーツァルト  AVCL-25050〜9

CDが10枚も入って3,000円という代物。むちゃくちゃ安いので,粗悪なものでもためしに,と思って買いました。聞いてびっくり。こりゃ掛け値なしの一流の演奏です。それが「頭すっきりモーツァルト」「 癒しのモーツァルト」「おやすみモーツァルト」「仕事がはかどるモーツァルト」「親子で楽しむモーツァルト」など分野(?),曲の調子別に10枚に分かれてそれぞれ60分以上収録されています。演奏家はナクソスの一流演奏陣で,録音も優秀です。
オムニバスのCDは「ながら聞き」にいいですね。1枚全部通して曲の調子が変わりませんから安心してかけていられます。それに一曲通して聞くときには気付かなかったその楽章の魅力を発見したりします。
最近は我が家はリビングで「おはようモーツァルト」をかけながら朝食を家族全員でとっています。車では「ドライブモーツァルト」か「ほっと一息モーツァルト」を聞いています。特に「ほっと一息モーツァルト」の中の「フルート協奏曲」は超美演で気に入っています。

フルートとハープのための協奏曲 フルート協奏曲  パトリック・ガロワ

実はこの上の項目で書いた「100曲モーツァルト」の中の「フルート協奏曲」が抜群によかったので、その演奏者を調べ、インターネットで購入したのがこのパトリック・ガロワのCDです。それほど、「100曲モーツァルト」の中の「フルート協奏曲」はすばらしかったです。購入したこのCD、なんと500円で「フルートとハープのための協奏曲」とおめあての「フルート協奏曲第1番」が入っています。演奏はやはりすばらしい。フランス系のフルートでしなやか。そして何よりうれしいのがガロアの遊び心です。ちょっとした装飾音や音程の揺らしがあって、楽しめます。音は透き通った超がつく美音で、本当にしびれます。指揮もガロワがしています。今まであまり管楽器奏者に関心がありませんでしたが、すっかりガロワのファンになってしましました。

後期交響曲集 ワルター コロンビア交響楽団

この有名なCDは学生時代から持っていて,たまには聞いていましたし,それなりの評価をしていたつもりですが,つい先日,ボザールのジュピティー301というスピーカーで聞いて見ました。驚きです。いろんな楽器がよく聞こえて,音楽の流れがあったかくて,ゆったりしていて,明るくて…。デジタルの録音と違った,ふくよかな暖かい響きがします。これは今までは気がつきにくかったこと。ジュピティーというスピーカーのおかげか,こちらの聞く耳が変わったのか。新鮮な響きに驚いています。録音も1960年の録音ですが,古さを全然感じさせません。というより,素晴らしい音質に聞こえます。最近のデジタルのあまりぱっとしない録音より,はるかによい音がします。
ワルターのゆったりめのテンポと,わずかにテンポを揺らして,おおらかに歌う感じ,木管の音質,低音もしっかり出しているし,今非の打ち所がないというほど,僕の心にぴったりと合います。

他の今まであまり聞いていないCDも,ジュピティーでどう聞こえるか試していこうと思います。

ベートーベン 交響曲第6番「田園」  名盤比較

ベートーベンに随分凝った時期がありました。10年ほど前のことです。今ではそんなに聞かなくなってしまいました。今でも時々きくのが、田園、バイオリン協奏曲、大公、弦楽四重奏の前期ぐらいでしょうか。あとは年末の第9とたまに英雄。ここでは田園の名盤をいくつか聞き比べて感想を書くことにします。

朝比奈隆 どっしりと落ち着いた演奏。ゆったりしたテンポ。僕は朝比奈を礼賛するわけではありませんが、最近の速い演奏に辟易しているから、ゆったりと進めていくタイプの演奏が好きです。朝比奈の演奏はいつも自然で心が安らぎます。朝比奈ー大フィルの最後の全集を持っていますが、その中で最高の演奏だと思います。

フルトヴェングラー これもゆったり。ただし5楽章はぐいぐいすすんでいきます。そこがまたフルトヴェングラーらしくて精神の高揚を感じさせます。フルトヴェングラーのCDとしては録音状態もすばらしい。僕としてはフルトヴェングラーの英雄や運命、第9より第一にこの田園を推します。次のセルと双璧。

セル 微妙なニュアンスに富んだ演奏。スタンダード。がっちりと構築されたなかに柔らかな感性が息づいていてすばらしい。総合点でこのCDがベスト1か。フルトベングラーか。010905セルの演奏は5楽章に伸びがありません。残念ながら、最後に来てちょっと楽しめないという感じがします。

カール・ベーム これもいい演奏です。5楽章に向けての高揚感がいい。フルトヴェングラーかセルかベームか、あとは好みの問題ですね。010905久しぶりに聞き返してびっくり。こりゃ、最高。どこをとっても、キズがない。安定感と伸びやかさ。深みと高揚。明るさと陰影。こうしてみると、やっぱり、ベームが田園に関しては最高ですね。

ワルター オーケストラの鳴らし方が底抜けに明るい。こんな明るいベートーベンもたまにはいいですね。少々やかましく感じるときがありますが。自由奔放な音作り。やっぱりワルターはモーツアルトの後期がいいですね。

イッセルシュテット、ブロムシュテットもいい演奏を聴かせてくれます。

ブリュッヘン、ハイティンクにはがっかりしました。どちらも速くてせわしなく、二度と 聞く気がしません。

080101 こうして自分の嗜好を公表していると、以前に書いたものがしっくりこなくなる場合が出てきます。自分の変化として興味深く思います。ブリュッヘンの田園はせわしなくて…とすぐ上の項目で書いていますが、ついこの間偶然聞いてみたら、なかなか面白かったのです。速めのテンポで、内声部がしっかり聞こえるし、きびきびした響きが好感が持てました。新鮮な響きで聞きほれてしまいました。

こういう変化が自分に起きた原因を考えてみると、この間にオリジナル楽器ブームを経て、ビブラートをかけない古典奏法などが、古楽器グループでない普通のオーケストラでも用いられるようになったことがあげられます。大阪でも本名徹次や金聖響がベトーベンの交響曲をビブラートをかけない透明な響きで演奏しています。そういう演奏に実演で接してオリジナル楽器の響きにも馴染みが深くなったのだと思います。数年前に購入したころには抵抗があったブリュッヘンも、自然に受け入れられるようになった自分の変化を楽しんでいます。今後、またどのように変わっていくかはわかりませんが、ブリュッヘンの(カップリングになっている4番と)田園はよいと思いました。

交響曲第3番「英雄」 カラヤン ベルリンフィル 1977年録音

ベートーベンの交響曲の中では最近「英雄」を一番よく聞きます。普段はブロムシュテット・ドレスデンシュターツカペレか、ディヴィス・ドレスデンシュターツカペレを聞きます。久々にカラヤンのCDを出して、偶然のように聞いてみました。そして驚き。カラヤンを馬鹿にするような気持ちは以前から持っていないのですが、どうしても軽く考えてしまっていたようです。この英雄の演奏はすごいです。ベルリンフィルの豊かな響きと、しっかりした骨太の歌があります。こりゃなかなかのもの。カラヤンを軽く評論する人はいったい何を聞いているんだろ。そして、それに影響を受けてしまっていた世間や自分はだめだと思いました。
カラヤンのCDは学生のころ買った廉価版のCDを何枚か持っています。チャイコフスキーの交響曲や三大バレーの抜粋はカラヤンの演奏に大満足ですが、ベートーベンでまさかこんなにいい演奏をしているとは、正直思いませんでした。明朗な歌があります。オーケストラを歌わせて、どの楽器もよく鳴らしています。モーツァルトやブラームスもよい演奏をしているのではないかと思います。ブラームスの交響曲も機会があれば聞いてみたくなりました。

パガニーニ バイオリン協奏曲 第1番 五嶋みどり スラットキン ロンドン交響楽団 

五嶋みどりのCDも随分持っています。いい演奏家だと思っていますが,CDではそんなによい録音に恵まれている感じはしません。五嶋みどりのCDの中では15歳で録音したこのパガニーニの協奏曲が断然素晴らしいです。パガニーニの協奏曲は技巧的で知られていますが,この演奏は技巧を感じさせません。むしろ歌謡性で勝負しているという演奏です。そこがすごいです。パガニーニの第1番も好きで,CDは沢山持っていますが,どの演奏も「技巧を感じさせない」などとうたい文句をつけながら,結局,技巧のひけらかしの域を超えないものが多いように感じています。ですが,このCDは,そもそも技巧を感じさせないどころか,思い切った歌いまわし,切々とした歌で勝負していて,気持ちがいいです。 若々しく颯爽と,そして伸びやかに歌います。技巧の冴えも抜群ですが,それ以上に五嶋みどりの音楽性の確かさを確信させてくれる1枚です。バイオリンの音も,キンキンと響かずに,耳に心地よく録音されています。伴奏もやかましすぎず,適度に厚味もあっていいです。
実はこのCDは,以前レンタルで借りたものをテープに録音しておいて愛聴していましたが,テープではもう聞かなくなったので,アマゾンで中古のCDを購入して,改めてその素晴らしさに感激したしだいです。

シューベルト 交響曲第2,3,8番  ブロムシュテット  ドレスデン・シュターツカペレ         目次へ 

8番は「未完成」ですが、2番、3番も歌にあふれた、すかっとした名曲。他にもケルテス:ウィーンフィル、クライバー:ウィーンフィルのCDも持っていますが、それより、3曲ともこちらのほうがずっといいです。ブロムシュテットの音の作り方が、とっても明るくて、澄み切っています。ドレスデンシュターツカペレの美音がよく生かされています。

「冬の旅」 比較

シューベルトの「冬の旅」に以前、凝ったことがありました。7,8年になるかもしれません。演奏会で小林英典、白井光子、アライサの「冬の旅」全曲を聞いています。3人とも素晴らしかったです。CDは8枚。白井光子のCDをいろいろ 聞いていて、つい「冬の旅」についても簡単にコメントしたくなりました。ただ、最近は家では「冬の旅」をほとんど聴かなくなってしまいました。やっぱりしんどいですね。全曲べったり暗いですから。歌曲のCDはどれも器楽のCDより、演奏者自身がはっきりでますので、そういう意味では面白いです 。

まず僕が一番よく聞くのはエルンスト・ヘフリガーの2回目のもの。声が枯れていて、淡々と、それでもって暗すぎず、もたれすぎず、さっそうとしていて、僕は一番シューベルト自身のイメージに近いのではないかと思っています。ピアノもハンマー・フリューゲルを使っていて、音が声にマッチしています。

次はヘルマン・プライとビアンコーニの版。声がソフトでよく響き、耳にやさしいです。暗くのめりこんでいかないのがいい。ハンス・ホッター。これは渋い。渋すぎるぐらい。でも惹かれます。ごくたまに 聞くのにいいかも。白井光子。このCDはビオラ版との2枚組の珍しいもの。新しい企画をするだけ白井光子とヘルは「冬の旅」にのめりこんでいる。演奏も個性的。暗くならず、決然と女から離れ、旅に出る若者の姿が、「冬の旅」には新鮮。演奏もよし。しかしどこかぴったりこない。決然としすぎのような気がする。ビオラ版は途中にところどころ入るドイツ語の朗読が余計。これがなくツィマーマンのビオラだけなら、もっと 聞いただろうにと残念です。

ここからの3枚はあまり評価しないもの。F=ディースカウの62年録音のもの。F=ディースカウは5回ぐらいこの曲を録音しているので、そのそれぞれがどうかまでは知りません。62年のムーアとの版はどうしても好きになれません。もっと後期の録音で聞いてみたいです。ペーター・シュライアー。これはどこか「冬の旅」と違うような、何か本質的に違う気がします。鼻にかかったような声もいやになります。F=ディースカウもそうなのですが、表情をつけよう、うまく歌おうとしているようで、それが邪魔をしているような感じがします。最後はクリスタル・ルートビッヒとレバインの演奏。これはものすごく遅い演奏。陰々滅々ととにかく暗すぎて最後まで 聞き通せないほどです。こんなの家で聞いていたら病気になってしまいそうです。

メンデルスゾーン 弦楽五重奏曲 第1番 第2番 シャロン弦楽四重奏団 ペトラ・ヴァーレ ヴィオラ

メンデルスゾーンの弦楽四重奏は「弦楽四重奏徒然草・オーロラSQのメンデルスゾーン」で書いたけれども、五重奏になるともっとマイナーで、あまりディスクも出ていない。が、すばらしい。1番が17歳、2番が36歳(晩年!)に作曲されたもので、若書きの伸びやかな旋律美と、晩年の落ち着いた雰囲気が楽しめます。メンデルスゾーンは、日本ではあまり評価されていないけれど、本当にすばらしい作曲家です。古典派のしっかりした土台の中にロマン派の香りを乗せて、伸びやかに歌います。シューベルトの歌より、僕は好きです。シューベルトは陰々滅々としたところがあって、時にしんどくなりますが、メンデルスゾーンはさわやかで伸びやかです。精神が健全なのか(もちろんそんなに単純に断じることもできませんが)、とってもバランスがいいので安心して聞けます。弦楽五重奏は、四重奏よりヴィオラがひとつ増えている分、響きが豊かになって聞き応えがあります。特に2番の3楽章は絶品です。
シャロンSQについては何も知りませんが、よい演奏をしています。メンデルスゾーンの曲にマッチした清潔な伸びのある音がします。

メンデルスゾーン 交響曲第3番「スコットランド」 エストマン オランダ放送室内管弦楽団

これはブリリアントのメンデルスゾーン40枚組み全集のうちの1枚。この全集は素晴らしい演奏が沢山収まっています。中でも交響曲全集が粒ぞろいです。交響曲全集として分売もしている様子。ブリュッツヘンやデ・ワールド、マズアといった力のある指揮者がそろっています。なかでもこの3番には驚きました。
「スコットランド」は薄暗い叙情、くすんだ色合いという印象を持っていたのですが、エストマンはすっきりくっきり、がっちりと演奏して、溌剌とした「スコットランド」を聞かせてくれます。この演奏で初めて僕はスコットランドのよさを知りました。それまでは、どちらかというと、退屈な曲というイメージがあったのですが、そんな印象は吹き飛んでしまいました。分厚いオーケストラの響きと伸びやかな旋律。明るくしっかり歌うオーケストラ。僕が今まで聞いてきたアバドの演奏とはまるで違います。
この全集は、ほかの曲もよい演奏が多いです。じっくり聞き込んでいこうと思います。

ドボルザーク 弦楽四重奏のための「糸杉」  ウィーン弦楽四重奏団  カメラータ・トウキョウ

なじみのない曲を買うときは勇気がいりますね。この曲も勇気がいりました。ウィーンSQに対する信頼があったので思い切って買ってみました。結果は大正解。ドボルザークは日本人に親しみやすい懐かしさを感じさせるメロディー作る作曲家ですが、この「糸杉」はそういう旋律の宝庫です。交響曲のような派手さはなく、弦楽四重奏ならではの安心できるゆったりした世界。仕事で疲れた日の夜、日曜の昼下がりくつろぎたい時に。

ドボルザーク 弦楽四重奏曲第12番「アメリカ」 ウィーン弦楽四重奏団 カメラータ・トウキョウ

10月13日にシンフォニーホールの演奏会に行って来ました。ウィーン弦楽四重奏団は毎年この時期に来るので僕も3回目です。この日のプログラムはセリオーソ、アメリカ、死と乙女という超名曲ばかり。最初から最後まで楽しめました。僕の今最も信頼できる音楽家です。この団体の長所を思いつくままにあげると、音がやわらかい、少しゆったり目のテンポ、全員がよく歌う、あくがない。それに今回の演奏会で特に気が付いたのが、セカンドバイオリンのクロイザマーの優秀なことです。普通弦楽四重奏ではセカンドバイオリンに若干の弱さがあったりするものですが、クロイザマーはウィーンフィルの首席ファーストバイオリンを務めるだけあって、ファーストのヒンクに決して負けていません。音量もテクニックも、歌も。それがすばらしい。

今回はビオラが新しい人に交代して、若干弱くなってしまった気がします。それが少し残念ですが。そういえば、チェロも最初のレップの方がよかったですね。シューベルトの弦楽四重奏曲全集の途中でドレシャルに代わっていますが、二人の音量や、音の伸びやかさが違うので誰が弾いているかすぐにわかってしまうほどです。もし、ビオラがパイシュタナーでチェロがレップなら、と残念に思います。が、ないものねだりをしてもしかたがありません。

「アメリカ」の演奏もCDも実演も両方素晴らしいです。一言でいうと、「自然でのびやか」です。「死と乙女」はアカデミー賞をとった名盤です。弦楽四重奏だけに打ち込んできたというのではなく、普段オーケストラで演奏している人たちなので、どこか普通の弦楽四重奏団と違います。アンサンブルの自然さ、伸びやかさ、それに自信でしょうか。音楽というもののとらえ方がおおらかな気がします。
テクニックでいうとアルバンベルクSQやメロスSQの方が上かも知れませんが、聞く者を安心させ、喜ばせるということではこの団体が一番でしょう。

ショパン  夜想曲全集  仲道郁代  RCA

ハイドンの弦楽四重奏曲を中心にした古典派の音楽をきいているなかで、たまたま以前から持っていたショパンの「ノクターン」をかけてみました。正直おどろきました。自然に音楽がながれ、違和感なく迫ってきました。おおげさな身振りの音楽はすぐに飽きていやになってしまうのに、ショパンのこれは、大変心地よかったです。ルイサダのマズルカや、ワルツの全集も持っていますが、そちらは気分転換に一枚 聞けばもう十分です。あとはまた半年ぐらい聞きたい気持ちにはなりません。しかしノクターンはより自然な形をしています。仲道さんの演奏がいいのでしょう。自然な流れ、これが一番ですね。この人の演奏をそんなに 聞いたことはありませんが、音楽に向かう姿勢に好感を持ちました。

ブラームス ハイドンの主題による変奏曲  コリン・デイヴィス   バイエルン放送交響楽団

ブラームスの交響曲には独特の思い入れがあります。2番は大学のオケで弾きました。4番は全国の大学オケ連盟の合宿で弾きました。そして3番はこのCDの演奏者コリン・デイヴィスの指揮でドレスデンシュターツカペレの演奏で シンフォニーホールで聞きました。すごく感動しました。いつもシンフォニーホールでの演奏会は、休憩時間にロビーでコーヒーを飲むことにしていますが、コーヒーを飲んでいる時も感動が残って、胸がドキドキしていたのを覚えています。デイヴィスの指揮といい、ドレスデンシュターツカペレの木質の音色といい、本当に最高の音楽体験をしました。その演奏会では休憩の後は1番の交響曲だったのですが、こちらの演奏は、3番ほどでもありませんでした。

このCDは1番のあとにこの「ハイドンの主題による変奏曲」と「大学祝典序曲」の2曲が入っています。1番ももちろん悪くないのですが、後の2曲の方が断然いいです。実演で感動したデイヴィスの3番も聞いてみたい気もしますが、あの感動はもうよみがえらないとあきらめています。
デイヴィスは高潔な演奏をします。正統なアプローチで変なことをしません。派手さもまったくありません。ひたすら誠実に音楽に真正面から取り組んでいるようで、信頼のできる指揮者だと思います。                                    

ブラームス 交響曲全集 カラヤン ベルリン・フィル 

上の項目にも書いていますがブラームスは4曲とも大好きです。ディスクでは1番をたくさん持っています。デイヴィスもヴァントもジュリーニも、チョン・ミョンフンもいいです。カラヤンのこの全集はオーケストラがなりきっていて、オーディオで聞く喜びがあります。2番も大好きです。これは大学時代オーケストラで弾きました。4曲中では一番よく聞くかもしれません。3番は、デイヴィス、シュターツカペレ・ドレスデンの演奏を大阪で聞いてどきどきするような感動をもらいました。それ以降思い入れをもってこの曲を聞いています。4番も大学のオケで弾きました。これはクライバーの名盤もケルテスも好きです。個別にはいろいろよいディスクがありますが、この全集は4曲が一定の水準で2枚に入っているので便利です。録音がいいし、ベルリン・フィルの分厚く明るい音、ホルンを中心にした中音の充実など、安心して聞けます。 カラヤン=ベルリン・フィルの最も円熟した時期の録音です。ついつい手が伸びてしまうディスクです。

チャイコフスキー 「眠れる森の美女」 アンドリュー・モグレリア指揮 チェココシツェフィル ナクソス

バランスの取れた、お行儀のしいハイドンを聞いていると、時にはパァーと自己を開放したくなります。思い切りやかましい後期ロマン派の曲など 聞いてみたくなるのものです。そういうゆれ戻しの曲としては、僕の場合ブルックナーの8,9番ですね。でももっと安心して、パソコンを打ちながら豊かに聞ける曲は、というとこれはもうチャイコフスキーのバレー曲が最高です。
パソコンや翻訳などの作業をしながら夜中に聞く曲は、①やかましすぎないこと、②均質な音楽の連続、という条件が要ります。安心して聞けないとBGMとしては失格です。そういう意味では「眠れる森の美女」がいい。しかも全曲版が。「くるみ割人形」もいいけれど、「くるみ割り」はオーケストレーションがより精密で強弱の差が激しい。「白鳥の湖」は例の「情景」の求心力が強く、ついつい 聞いてしまい、作業の邪魔になるという面があります。作業の邪魔にならず、長時間、均質の、明るい、安心できる音の世界。リズミカルでかつ強すぎない。メロディックでかつあおりすぎない。これらの勝手な条件を見事にクリアーして、僕の古典派ゆれ戻し時の定番がこの「眠れる森の美女」です。

「眠れる森の美女」 パリ・オペラ座バレエ  ルドルフ・ヌレエフ演出 デイビィッド・コールマン指揮 パリ・オペラ座管弦楽団

これはバレエのDVDです。バレエはそんなに詳しくないけれど、もう一枚持っているボリショイバレエの「眠り」より、ずっといいです。演奏も舞台も。舞台が豪華で明るいです。それにオーロラ姫役のオレリー・デュポンが可憐です。
音楽は予想以上にうまいので驚きました。ソロはマイクで音を拾っているようでしたが、うまいです。管楽器もみなうまいです。

「白鳥の湖」全曲 ダニエル・バレンボイム指揮 ベルリン・シュターツカペレ

これはバレエ公演のライブDVDです。画面も素晴らしい。バレエのことは詳しくはないけれど,主役の2人が魅力的です。とくにオデット役のシェーザーは気品と優雅さを兼ね備えオデット役にぴったりで,何回見ても飽きません。
演奏がまた素晴らしい。よくバレエの公演では,舞台上にばかり神経がいって,演奏がお粗末なことが多いのだけれど,これは全力投球の演奏です。あまりに素晴らしいので,MDに録音して音だけでも楽しんでいます。音だけで十分商品価値があると思います。
一つ一つの音を丁寧に演奏していますし,バイオリンやチェロのソロも素晴らしいです。ライブと思えないほどの完成度の高いソロを演奏しています。
舞台上の足音も聞えるところがありますが臨場感があって,よろしい。
他のハイライト版では聞けない臨場感,それから全編を貫く叙情。これはやはり全曲版・ライブならではでしょう。
バレンボイムの力量を初めて目の当たりにしました。今まではあまり好きなタイプの演奏家ではなかったけれど,これ一枚で僕の認識をひっくり返すのに十分です。

ラフマニノフ ピアノ協奏曲第1番・第2番 クリスティアン・ツィマーマン 小沢征爾指揮 ボストンフィル

ベートーベンはしんどいし、モーツァルトは軽すぎて、しっかりとクラシックを聞いているという実感がほしく、かつ負担にならないようなもの…ブルックナーは重すぎて、マーラーは不健康な感じがして…、チャイコフスキーもいいけれど、旋律がちょっと邪魔…というような時、ムードを高め、適度に分厚い響き、適度なきらめき、疲れを癒してくれるようなゆったり感、ゴージャスな感じ…そういうこちらの身勝手な要求をすべて満たしてくるのがラフマニノフのピアノコンチェルト。
ラフマニノフも交響曲になるとちょっともたれます。2番はいいけれど。
このツィマーマンの演奏はいい。響きが分厚く、かつ重くなりすぎない。ムード音楽としてもぴったりだが、ムード音楽の軽さはなく、真摯な姿勢の演奏が心を落ち着かせてくれます。真剣に耳を傾けてもそれに応えてくれる演奏。ムード音楽として聞き流そうとすると聞き流せる曲。ヒーリングのためのCDは、どうしてもヒーリングのための演奏や、ヒーリングのための曲ばかりが集められていて、なんだか物足りません。この点ではこの演奏は真剣勝負で気持ちがいいです。真剣勝負なのに、いや、真剣勝負だからこそ、心休まります。
疲れたときにちょっと聞きながら何か作業をするときはこのCDをかけることが多くなっています。
 

ヴィニアフスキー バイオリン協奏曲 第1番 第2番 イツァーク・パールマン ロンドン・フィル 小沢

人生の節目で出会って、独特の印象で残ってしまう曲があります。僕にはヴィニアフスキーのバイオリン協奏曲第2番がそうです。出会いは小学校の4年の終わりごろ。そして大学時代。そして去年は印象的な場面で偶然きいて‥‥。CDはもっていなかったのですが、夏休み明けに買いました。ここでのパールマンは若き日のパールマンで、今のこってりした弾き方ではありません。颯爽とすかっと弾ききっていて、爽快です。

演奏は僕のお目当ての2番より、1番の方がいいですね。1番はこのCDを買うまでは聞いたこともなかったのですが、すっかりファンになってしまいました。2002年の秋一番よく 聞いているCDがこれです。1番の1楽章と2楽章が特にお気に入りです。 

ブルックナー 交響曲第5番  朝比奈隆  新日フィル フォンテック

ブルックナーの交響曲のナンバーワンはどれでしょうか。5,8,9番迷ってしまいます。僕としては一番楽に聞けるのがこの5番です。演奏はいろいろ聞き比べましたが、どっしりと安定した朝比奈が一番素直に心に響いてきます。僕は中学3年の時フェスティバルホールで朝比奈のこの曲の演奏を 聞いて、涙を流さんばかりに感動したことがあります。いうなれば僕のクラシック音楽感動の原点の曲であり、演奏なのです。朝比奈の演奏は大阪フィルとの演奏より東京のオケとの演奏の方がよい演奏が多いように思うのは僕だけでしょうか?

ブルックナー 交響曲第9番 朝比奈隆指揮 東京都交響楽団 フォンテック               

とにかく恰幅のいい演奏です。僕は朝比奈を1970年代から聞いてきたが、実演でのブルックナーは本当にすばらしいです。CDになるとなかなかその真価が伝わりにくいですが、このCDは朝比奈のスケールの大きさが80パーセントは再現され伝わってくるように思います。ブルックナーファン必聴版。 

ブルックナー交響曲全集 オイゲン・ヨッフム ドレスデン・シュターツカペレ 

ブルックナーに関してはずっと朝比奈がいいと思って聞いてきましたが、ヨッフムの全集がさらにすばらしいです。最近よく話題になるヴァントは聞いたことがありません。聞いてみたいと思っていますが、今は当分ヨッフムだけで満足できそうです。
何がそんなにいいんでしょう。まずオーケストラの響きがいいです。ドレスデンシュターツカペレですから言うまでもなく、やわらかいです。それに金管がよく鳴ります。ヨッフムが金管をガンガン鳴らすほうですが、それによく応えた力強く味わい深い金管です。
ヨッフムの指揮には神々しさを感じます。特に4、5、8、9番がいいです。5番は有名なコンセルトヘボウとの名盤よりずっといいと思います。4番は精緻な演奏です。9番は3楽章がすごいです。どんどん上り詰めていく感じです。
朝比奈より、ぐいっとひきしまって、肌理の細かさと豪胆さがあります。速めのテンポでだれません。グイグイひきつけ異次元の高みに引っ張っていってくれます。この全集はしばらくは僕の愛聴盤として手元に置いて 聞き続けることになりそうです。

ブルックナー交響曲  聞き比べ ヨッフム 朝比奈 ヴァント チェリビダッケ 

ブルックナーの交響曲の4,5,8,9番が特に好きです。よく聞きます。上に書いた時期からさらに経験も増え,自分なりの聞き方がある程度はっきりしてきた感じを 持てましたので,書くことにしました。

ヴァント(ベルリンフィル)は確かに精緻でものすごいのですが,楽しめません。楽しめないということは感動できないということです。精緻さには感心しますが どうしても芸術としては何かもの足りないです。精神が高揚しません。それでも確かに評判になるだけあって,素晴らしいのは認めます。中でも4,8番がよいと思います。

チェリビダッケ(ミュンヘンフィル)もやはりすごいです。普段は聞けません。あまりにも特殊ですので,よほど気が向いたときに聞き込む分にはよいと思います。確かにこの人,常人にはないすごいものを持っているようで,それはそれで感動的です。一聴の価値はあります。特に4,8番はよいと思います。 しかしこの人に付き合わされているようで疲れます。

朝比奈,この人もすごい。部分的にはヴァントと聞き間違えるほど精緻な面もあって今回しっかり聞き返して驚きました。安心できるテンポでじっくりくるからついつい聞き込んでしまいます。しかし精緻さ,磨きこみという点ではヴァント,チェリビ,ヨッフムには劣ります。5,8番が良いと思いました。

ヨッフム(ドレスデン),これはすごい。精緻でもって,豪胆。ぐいぐいと上り詰めていく高揚感・崇高感があります。これが他の人と違うところです。上り詰めて神々しい境地にまで達します。チェリビのようにねっとりとせず,早めのテンボで力強く推進して行くところが心地よいです。

好みの問題でしょうが,僕としては 総合的にはヨッフムが一番です。4,8,9番が特に良いです。5番はコンセルトヘボウも良いのですが,ドレスデンのものが意外にじっくりと情感がこもっていて,素晴らしいです。9番はドレスデンのものも良いのですが,ベルリンフィルのものがより豪胆で, ものすごいです。

(一つ上の項目に書いたものと結局あまり大きな変化がありませんが,それだけヨッフムの演奏に惹かれているということです。 ヴァントとチェリビダッケを聞き比べて,さらに自分の感覚に確信が持てたということでもあります。評判のものはとにかく聞いておかないと,自分の未経験のより素晴らしい音楽があるのではないかという不安感が消えません。ヴァントとチェリビダッケを 聞いた今だからこそ,ヨッフムの素晴らしさを堂々といえます。僕にとっては,ヴァント,チェリビダッケより,ヨッフムです。
ブルックナーの交響曲は精神的に高ぶらせてくれ要素があります。そして編成が大きい分,オーディオ的にもおもしろいですし,時間的にも長くて,自宅で夜中に勉強しながら 聞くのに適しています。)

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上の文章を書いてからさらにシューリヒトを聞きました。8番,9番です。これがまたすばらしい。テンポを揺らしながら歌い込んでいきます。速めのテンポでぐいぐいと引っ張っていくところはヨッフムなみですが,じっくり歌い込むところもあって,その変化が実に的確で驚くほどつぼにはまっています。8番としては僕の 聞いた範囲で一番おもしろい演奏です。しばらくはシューリヒトに夢中になりそうです。
録音が古いので警戒していましたが,なかなかどうして素晴らしい音質です。ウィーンフィルも燃えに燃えているという感じで,気合が入っています。
9番も同様にすばらしい演奏です。

ブルックナーの交響曲の聞き比べは楽しいです。あと聞いてみたいのは,マタチッチ,ジュリーニ,カラヤン,クナッパーツブッシュ…

お金と時間がないので,ゆっくりゆっくり聞き込んで,レパートリーを広げて行きたいです。

ボロディン 交響曲第2番  ゲルギエフ  ロッテルダムフィル  フィリップス       目次へ 

この曲は僕の思い出の曲。大学2年の時の定期演奏会のメインの曲でした。この曲は3楽章の最初と最後にホルンとクラリネットの大ソロがあるのですが、クラリネットの先輩(きれいな女の先輩でした)が本番を終え、感激と緊張が一気にとけたのか舞台裏で泣いていたのを思い出します。この3楽章はほんとうに胸がキュンときます。ボロディンは珠玉のような名旋律をたくさん書いていますが、この3楽章はその中でも最高のものではないでしょうか。マイナーな曲ですが、カリンコフの交響曲とともに隠れた名作です。

カリンコフ 交響曲第1,2番 クチャル ウクライナ交響楽団  ナクソス

2年連続ナクソスの売上ナンバー1はなんとこのカリンコフのCDだそうです。売れるだけあって、やはり魅力的な曲で、いい演奏です。ロシア情緒を満喫させてくれます。ボロディンの交響曲もロシア情緒という点では負けていませんが、ボロディンよりカリンコフのほうがウエットなところがいいですね。たまにはこういう情緒にひたってみるのもいいものです。まだこの曲を 聞いたことのない人に是非お勧めしたい1枚。

バルトーク バイオリン協奏曲第1,2番  チョン・キョンファ  ロンドン

チョンキョンファのピンと張りつめたバイオリンの音色がこの曲にぴったりあって稀有の名演。ショルティの指揮。2番の出だしのバイオリンが切り込んでいくような緊迫感がたまらない。 

バルトーク ビオラ協奏曲  ホン・メイシャオ   ナクソス                   目次へ 

バルトークとベルクは現代作曲家のなかでも独特の、なにか精神的なものを感じさせてくれる作曲家だと思います。このビオラ協奏曲は2つの版が一緒におさまっているので、1枚でどっぷりバルトークのビオラに浸っていることが出来ます。バルトークは有名な「オーケストラのための協奏曲」より、バイオリン協奏曲やビオラ協奏曲、それにピアノ協奏曲、弦打楽器チェレスタのための音楽がいいですね。

白井光子のCD

僕の大好きな音楽家。夫君のヘルトムート・ヘルのピアノもすごい。精緻にして情感たっぷりです。二人のデュオコンサートに4回行っていますが、いずれも心の底から満足のいくすばらしいコンサートでした。中でもシューマンの「詩人の恋」がすばらしかった。さて、今数えてみると白井光子のCDを13枚持っています。特にお気に入りのCDをいくつか取り上げてコメントをつけてみます。

 シューマン 歌曲集

名盤。「リーダークライス」がすばらしい。これはこの曲のベストだと思います。そんなにたくさん他のCDを聞いたわけではないけれど。ゆったりと、一語一語丁寧に、深く情感を込めながら。白井光子のCDの中でも最高の出来ではないかと思います。

071230書き足し 白井の「リーダークライス」は1982年と1985年の2種あって、どちらもよいのですが、僕は1985年のもののほうが好きです。82年の録音は、少しマイクが遠いのか、何か距離感があってもどかしい感じがします。85年のものは録音がすばらしいです。ただし、85年盤はリーダクライスの後に入っている曲が、少々暗く、楽しめないので最近はあまり聞かなくなってしまいました。「詩人の恋」と「リーダクライス」のカップリングで入れてくれたらと思います。

モーツァルト 歌曲集

これは安心して聞けます。全編ゆったりくつろげるCDになっています。疲れを癒してくれるCDです。

シューマン 2重唱3重唱のための歌曲集

これは珍しい曲を集めたCDです。アンサンブルとしての面白さがあります。白井光子もヘルトムート・ヘルもアンアンブルが上手です。個人技をほこるより、人と寄り添いながら音楽する姿に好感が持てます。 聞けば聞くほど味が出ます。

ブラームス 歌曲集 071230

折につけ白井光子を聞いてきましたが、落ち着いてじっくり聞けて、暗くならないCDがやっぱり残ります。シューベルトやシューマンもいいのですが、モーツァルトとこのブラームスのCDがやっぱり一番聞いているようです。一連の白井光子のCDには、録音の丁寧さ、一音一音を大切にしている姿勢が伝わってきて、心が繊細に優しく癒されるような感じがします。メゾ・ソプラノというのもキンキン響かないのでいいですね。夜一人で勉強しながら聞くのにとってもいいです。

フーゴ・ウォルフ オーケストラ伴奏つき歌曲集

これもちょっとかわったCDですが、聴かせます。

ビオラとピアノ伴奏による歌曲集

これも珍しいですね。ビオラはタベア・ツィマーマンが弾いています。うまいですね。ビオラとメゾソプラノはぴったり合います。CDの中ほどはちょっとしんどい曲が続きますが、前と後ろはいいですね。何度も 聞き返したくなります。 

ギドン・クレーメルのCD 080105   <未完成 今後書き足していきます>

学生時代からずっと聞いています。バイオリニストでは鄭京和と並んでもっとも好きな演奏家です。いや、鄭は韓国人だからという贔屓目があるから、純粋に演奏家としてならトップでしょうね。何がいいかというと、考えながらひいているところ。感情に溺れないところ。個性をはっきり持っているところ。だから飽きないし、同じ曲でもクレーメルはどう弾いているか聞いてみたくなります。そんな彼のCDについて、感想を少しずつ書いていこうと思います。

バッハ 無伴奏バイオリンのためのソナタとパルティータ  2002年録音 

若いときにも録音していますが、これは2回目のもの。若いときのはもっと息が詰まるぐらい速いテンポでぎっしり弾いているけれど、これは余裕があります。攻撃するような強い弾きかたがずいぶん収まり、CDで聞いても疲れません。シェリングとシュロモ・ミンツを愛聴してきましたが、クレーメルの演奏がやはり一番心に響きます。クレーメルは美音というよりはどちらかというとあまり音の美しさにかまわないスタイルです。高音が割れても気にせずに音に喰らいついていくような弾きっぷりが爽快です。そして精神的な何かを感じさせてくれるところ。これが大事です。とくにバッハには。曖昧な書き方しかできませんが、精神的な何か、です。祈りというとちょっと違うけれど、うまく言えませんが、音楽の向こうにある何かをきちんと伝えてくれる演奏家であり、それにぴったりあった曲です。

ベートーヴェン バイオリン協奏曲 

マリナー指揮の演奏もアーノンクール指揮の演奏もどちらもクレーメル独自のカデンツァが使われていて楽しいです。バイオリン協奏曲の中で最も好きな曲がこの曲です。沢山の演奏を聞いてきましたが、鄭京和とコンドラシン/ウィーン・フィルの演奏を第1とすることに変わりはありませんが、その次はクレーメル。マリナーの盤が面白いですね。アーノンクール盤もいずれ劣らぬ名演です。

ブラームス バイオリン協奏曲

バーンスタイン盤、とアーノンクール盤を持っています。バーンスタイン盤のほうが若々しく勢いがあって好きです。

二重協奏曲

モーツァルト バイオリン協奏曲

モーツァルト

もう少し安心してゆったりと聞いていたい気もするけれど、それでも結局一番聞いてしまうのがこのクレーメル。グリュミオー/ディビス盤もすばらしいし、チョーリャン・リンの演奏も好きです。 クレーメルのモーツァルトは愉悦喜悦だけでないところがよろしい。

ベルク

バッハ

速い!快速演奏。でもバッハはこのくらい淡々とてきぱき軽みがほしい。かといって軽すぎない。軽く淡々と、そしてすくすくと心に迫ってくる。こんな演奏はやはりクレーメルでないとできないのだろう。

シューマン

チャイコフスキー

協奏曲もいいけれど、カップリングされている「悲しいワルツ」が絶品です。クレーメルのすごさがこの小品に如実に出ている。僕のクレーメル評価の原点とも言える演奏です。悲しいメロディーが控えめな音量で、控えめに奏でられる。五嶋みどりはここをたっぷりと悲しく歌ってしまうからぜんぜん悲しくない。ただのセンチで終わってしまう。ぐっと抑えて、抑えて、歌わないことで出てくる味。声高に叫ぶのではなく、ひっそりと耳元でささやく方が雄弁であったりする、それです、ここでのクレーメルの演奏は。クレーメルの音楽は、情熱がストレートに出るのではなく、知性というフィルターを通して出てくるから面白い。芸の深さを感じます。特にこの曲の演奏はそれがわかりやすい形で出ています。

シベリウスの協奏曲

フリードリッヒ・グルダのピアノ   <未完成 今後書き足していきます >

一言で愉悦。音がとびちり、はじけている。透明できらきらした音が、生き生きと息づいている。モーツァルトの20、21、25、27番の協奏曲(=アバド=ウィーンフィルとのCD )は本当に素晴らしい。23、26番の協奏曲(=アーノンクール=コンセルトヘボウ)との演奏もいいけれど、オーケストラの差か、いまいち楽しめない。ピアノソナタでは、17番16番と幻想曲を入れているPOCG−1068がすばらしい。11番13番15番とロンドPHCP−20328もよいが、後期のソナタの透明感がたまらない。

 ベートーヴェン ピアノソナタ全集

ハインツ・レーグナーの演奏 

ハインツレーグナーの演奏を意識して聞き始めたのは『くるみ割り人形』ハイライトの廉価版(1000円)のCDでした。しっかりと演奏していてよいと思いました。同じシリーズで『白鳥の湖』を聞いてびっくり。これほど本格的にがっちりと『白鳥の湖』を演奏しているのを聞いたことはありませんでした。そして『ベートヴェン序曲集』。ここに至って完全にファンになってしまいました。まじめにがっちりとしっかりと演奏していて、かつ重くありません。歌があります。重厚にして流麗。
ブルックナーの交響曲も4〜9を買いました。どれも素晴らしい演奏です。僕が今まで親しんできた朝比奈やヨッフムとは違うスタイルですが、これはこれですばらしい。重厚でドイツ的なのに、歌があって響きが明るいのです。ぱっと華やかなのに、軽くない。不思議な絶妙のバランス感。
マーラーの3番6番もすばらしい。バーンスタインで親しんできた重い感情過多の演奏とは一味も二味も違います。しっかりがっちりしていながら、歌があります。かといって歌におぼれるわけでもなく、薄っぺらでもなく、むしろドイツ的で重厚で分厚い響きでありながら、鈍重どころか、妙にすっきりと明るい響き。これが魅力です。
これ以上書いても同語反復になるだけですが、レーグナーという指揮者には他には得がたい才能を感じます。

 

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下書き

ヤンドー ハイドン

僕はバイオリンを習っていましたので,バイオリンの曲はよく聞いてきましたが,ピアノにはそんなに執着があったわけではありません。

ヤンドーのハイドンのピアノソナタは全部持っています。すばらしい。

ピリス モーツァルト

音の透明感。落ち着いた感じ。

フランク・ヴァン・デ・ラール メンデルスゾーン

ちょっとロマンティックで,かつおぼれない。マイクとちょっと距離があるのか,音が柔らかめに録音されています。輪郭がぼやけるというよりも,耳に優しく夜中の勉強のBGMにぴったりです。

オイストラフ スコダ

モーツァルトのヴァイオリンソナタ。これは,ピリスのソナタから出てきた関心です。ヴァイオリンソナタといっても,「ヴァイオリン伴奏付きのピアノソナタ」というピアノ主導型の曲です。 スコダのピアノが枯れたような素朴な音がして,耳に心地よい。オイストラフ最後の録音らしい。 技術的な衰えは全く感じさせない。衰えではなく,円熟や達観というより高い境地を感じさせる。ウィーンのバウムガルテンでの録音。 ピアノもヴァイオリンもどこか控えめなところがあって好ましい。淡白。実際に聞く前はそのなこと思ってもみなかった。もっと油ぎった押しの強い演奏かと勝手に予測していたのだけれど,本当に控えめで,ついついこちらが耳を澄まして聞いてしまうような演奏だ。繊細,そうこの言葉がピッタリだ。味わい深いすごい演奏だ。スターンの録音と並んで,E線の金属音が聞かれないので,耳に優しい。 CDの最後の曲が「泉のほとりで(ああ,私は恋人を失くした)」による6つの変奏曲。これがまた素晴らしい。モーツァルトは変奏曲がうまいが,この曲はその中でも傑作だ。研ぎ澄まされた感覚と,変奏が繰り返されて次第に煮詰まっていく のに,淡々と控えめに弾いていく二人。これはもう最高のCDです。

スターン ブロンフマン

スターンなんか趣味ではありませんでした。 あたりまえの演奏をするおっちゃんくさい人という失礼な印象を持っていました。後進を指導するというような教育的な分野では大いに評価しますが,あまり芸術的な深みを感じさせない演奏家というレッテルを勝手に貼っていました。ところが,アマゾンの試聴で,モーツァルトのヴァイオリンソナタを聞いてびっくり,あまりに素晴らしいので注文しました。一言で言うと,「おおらか にゆったりと」に弾いています。 僕の持っているモーツァルトのヴァイオリンソナタの中では一番,スタンダードで安心して聞けます。高音も耳にやさしく,耳障りな金属音はほとんどありません。ピアノとのバランスも絶妙で,引っ込みすぎでもなく,出るべきところはしっかり美音で出てきます。 よく響く伸びるピアノです。全16曲の安定感も抜群です。特にK481(41番)の第2楽章の深い味わいなど,他のCDでは得られないものです。 ゆったりしたテンポでゆったりと歌いこんでいく感じは,他のCDではきかれない深みを感じさせます。総合点ではスターンが一番です。

内田光子 スタインバーグ

ピアノ主導型を実際に録音のバランスにも生かしたCD。 しかしそれでもヴァイオリンの高音部の金属的な音が気になります。K377の2楽章の変奏曲でシーンと聞かせる部分がある。聞き手を引きずり込む弱音部分はすばらしい。アダージョなどゆったりした部分で,スタインバーグの線の細いヴァイオリンが切々と歌う感じはなかなかよい。内田のピアノもスタインバーグと個性がよく合っていて,よく歌う。内田のピアノはソナタの時より余裕があるのか,楽に聞ける。ピアノとマイクの間にある程度距離があるのか,やわらかく録音されている。

ヒンク 遠山

一番安定,自然。1集より2集目以降のほうがよい。録音の状態が2集目以降のほうがピアノの響きがより柔らか。
ヴァイオリンもきつくなくてよい。ベーゼンドルファーの響きが柔らかで透明感があってよい。 このピアノは高音部に独特の輝きがあって中音部とはまた違った音がするので面白い。低音はちょっとこもったようなやさしい独特の響きがする。 ウィーンのバウムガルテンでの録音ということだが,間接音が自然で,心地よい空間を感じさせてくれる。 ふくよかというのか,響きがやさしくそれでいて輪郭がぼやけていない。ヒンクのヴァイオリンは,どこをとっても力みがなく,自然で心地よい。

デュメイ ピリス

ぴりぴりしていて楽しめない。音楽がはじけるように,あるいは伸び縮みしながら,はつらつと動くのは新鮮でいいのだけれど,疲れる。部屋で「ながら聞き」をするには向かない。モーツァルトにしては鋭角すぎて, 神経を逆なでするところがある。二人の音楽性の素晴らしさはよくわかるけれど。歌いまわしは明るく思い切りがよくてきびきびしていて気持ちがよいのだが,いかんせん,耳にきつすぎる。
 

パールマン バレンボイム

シュムスキー バルサム 

塩川悠子 遠山慶子 スタンウェイ

ハーン シュー 

若々しい。音がきつく録音されていて残念。もっと距離感のある,間接音を含んだ録音だとよかったのにと残念。ヴァイオリンもピアノもちょっと一生懸命弾きすぎという感じがして,楽に聞けない。 

グリュミオー ハスキル

グリュミオー ワルター

モーツァルトの歌に合った音色と歌いまわしで,ポルタメントがかかることころ(40番の前奏など)は心地よい。

ムター

ビブラートの幅が大きくて,モーツァルトには合わない。音に清楚な感じがない。どこか大味な感じがして,好きになれない。

 

 


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